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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第23章 愛を伝えるために-キセキ-



「(滉……。)」



貴方の愛が、まだ身体中に残ってる。呪いに掛かったように消えなかった首の跡を、貴方がたくさんのキスで上書きしてくれた。



私が怖がらないように、痛がらないように、気遣う言葉を掛けながら優しく抱いてくれた。



貴方への愛おしさが、止まらないの。



「残念だけど、私、愛する人がいるの」



「あ、愛する人…?」



「貴方で穢されたこの身体は、その人のたくさんの愛で上書きされた。彼に私の全てを捧げたの」



「な…何だって!?」



「勝手に恋人面されても迷惑だよ。貴方はあの時から私の恐怖の対象でしかない。私が愛を求めるのはあの人だけだから」



「……………」



男はショックな顔で唖然としている。



「彼にしか触れられたくない。彼以外の愛は欲しくない。私は…彼をとても愛してるの」



「そ、そんな…」



「誰よりもその人を一番に愛してる」



私はあの時、彼がキスしてくれた指に唇を押し当てる。



「早く会いたくて堪らない」



幸せそうに微笑む私を見て、男は怒りで体を震わせていた。



「ふざけるなよ…。君が愛していいのはボクだけだ。ボクは君の全てを知ってる。これって特別な関係ってことだろ!?」



「貴方は私の全てを知っているわけじゃない。だから特別でも何でもないよ」



「う、嘘だ…!!ボクは君が産まれた病院も家族構成も通っていた学校や仕事先だって知ってるんだぞ!!それこそ君が履いている下着の色だって当てられる!!凄いだろう!?」



「(本当に腹立たしい男…。)」



「き…君を…ずっと見ていたから…し、知ってるんだ。ボク以外に君のことを理解できる奴はいない。だからボク達はこうして再び出逢うことが出来たんだよ…!!」



「もう二度と私の前に現れないで。」



「っ…………!!」



漸く私の本気が伝わったのか、男が途端に焦り始める。



「詩遠ちゃん…さっきから何をそんなに怒っているの?そんな危ない物まで持ち出して…」



「それ以上近付いたら刺すから」



「もしかしてボクが君を突き落とそうとしたことを怒っているのかい?あんなの本気なわけないじゃないか、ただ軽く押して君を驚かせようとしただけだよ!」



「……………」



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