第2章 新しい居場所-フクロウ-
「(懐かしい感じがする。)」
私は部屋の中をつい見回してしまう。ベッドや本棚は備え付けらしく、私は身一つでやってきた。
それでも───充分だ。
元の世界で暮らしていたマンションの部屋に似ていて、とても安心できる。
「(今更心配してもしょうがないけど…冷蔵庫の中身、絶対賞味期限切れてる。この世界に来てから随分経ってるし、ほぼ全滅だろうな。)」
腐る物は入ってなかったハズだが、私は冷蔵庫の中に入っている食べ物達の変わり果てた姿を想像して、身体をゾッとさせた。
「三階は一応女子専門だ。私の部屋は一番端で久世の部屋は隣だから困ったことが起きたらすぐに呼んでくれ」
「はい」
「取り敢えず一休みするといい。夜は一緒に食事をしよう。少し遅くて申し訳ないんだが、午後8時くらいになったら、また作戦室に来てくれるか?」
「午後8時くらいですね」
「うちの勤務時間は基本的に午後7時までだから、それぐらいになれば皆が戻ってくる」
「分かりました。
皆さんに会うのが楽しみです」
「これから毎日、もう飽きるくらい顔を付き合わせることになるさ。じゃあ、また後でな」
「はい、有難うございました」
頭を下げて部屋を出て行く朱鷺宮さんを見送る。
「……………」
独りになった私は改めて部屋を見回す。
「(今日からここで暮らす…)」
カーテンやベッドからは真新しい布の匂いがする。ガラス窓も曇りなく、ぴかぴかに磨かれている。
「あ、荷物…」
事前に送っていた衣類を段ボールから出してクローゼットにきちんと収納する。
「長袖とワンピースと…スカートに上着…。大正って感じの洋服だな。露出の少ない服を選んだけど、これで平気だよね?」
この世界ではあまり素肌を出している女性はいない。元の世界では普通に丈の短いスカートやデニム生地のズボン、肩を出した服やお腹を見せた服を当たり前のように着ている女性達が大勢いる。
だが、この時代に来て学んだ事は、女性は膝上までのスカートは履かない、露出の多い服装は控える、という衝撃の事実だった。
「確かこの世界に来た時も短いスカート履いてて、周りの視線が痛かったもんな」
その時の記憶を思い出し、クローゼットの扉を閉める。
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