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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第22章 月に行きましょう-アイノカタチ-‪‪❤︎‬



「伝えなければいけないこともあるし…よし!」



私が意を決して部屋を出ようとした時だった。



トントンッ



「はい?」



返事をしたものの、それきり声はない。



「…どちら様ですか?」



まさか、と。彼の顔が浮かんだものの、扉に走り寄りたい気持ちとは裏腹に足が動かない。



「…ど、どちら様でしょうか?」



「……───俺。」



声を聞いた瞬間、私は駆け出し扉を開けた。



「滉!?」



「……………」



口にすべき言葉は幾らでもあるはずだった。
お帰りなさい、とか、傷の具合はどう、とか。



「……………」



それなのに、私の唇は何も喋らないのだ。



「……────突然ごめん」



「だ、大丈夫…」



「…上がっていい?」



「…うん、どうぞ」



私は彼を部屋の中に入れる。



「…久し振り」



「ひ、久し振り」



「元気だった?」



「お陰様で」



「なら良かった」



「(お、怒ってる…わけじゃないよね?)」



何処か投げ遣りな、ぶっきらぼうな物言い。



彼らしいと言えば彼らしいけど
どうしていいか困ってしまう。



「そうだ。紅茶でも淹れるね」



平然を装っているが、内心は焦っていた。この場をどう切り抜ければいいのか分からなくなり、私はティーカップに指を伸ばす。



「それは嫌がらせなのか?」



「えっ!?」



「俺はあんたを抱きしめに来たのに」



「!!??」



ガチャンッ



「あ……っ!」



ティーカップを床に落としてしまった。



「俺が拾うよ、今のあんただと絶対怪我する」



「……───よ、よろしくお願いします」



彼の言う通りだった。私の指は震えていたし、呼吸もおかしかったし、今、破片など拾ったら間違いなく血が流れる。



私が部屋の隅の小さなコンロに寄り掛かってるうちに片付けは済んだ。



彼は相変わらず無表情に、窓際に歩み寄る。



「動けないなら運ぶけど」



「…歩けます」



そろり、そろり、と。
私はゆっくりと彼に歩み寄る。



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