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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第21章 この世で一番美しい炎-マモルモノ-



私は下げていた仕込み杖を抜き払い、ぐっと柄を握り締めた。


「…馬鹿、止めろ!そんなものじゃ何も…っ」



「その程度の刃で私を傷つけられるものなら、やってみるといい」



「(…悔しい、こんな奴に、みんなが…滉が…振り回されているなんて…)」



私は四木沼喬の右腕目掛けて刀を振り下ろした。



「痛…ッ!!」



けれど私のその手は呆気なく彼に掴み上げられ、刀は床に落ちてしまう。



「く……っ!」



「もっとしっかり躾けておくべきだった。だがこれで学んだろう?許しを乞え、滉。飼い犬の分際で何かを得ようなどと間違っていたと。何かを望むなど、分不相応だ。貴様は腐肉を喰らい泥水を啜り、この世界の底辺で這いつくばって生きるべき存在」



掴み上げられた手がギリッと締め付けられる。



「貴様が何のために生かされているのか忘れたのか。お前はこの一連の事件の愚かな首謀者として警察に差し出されるのだ」



「!?」



「希望を望むなど……───おこがましい」



「貴方は……っ!」



「…それとも、まだ躾が足らないか?」



バンッ



「ぐ、うあああ…────!?」



「滉!!」



「…っう、あ……っ」



滉がよろめき、鮮血が床に滴り落ちる。諦めたくはなかった。けれど四木沼喬という男の、同じ人間とは到底思えない非情さに、私達はただ蹂躙されるしか出来ずにいた。



「っ、離して…!!」



なんとかして彼の元へ行こうと身動きをするが、彼は力強い手で私の顎を掴み、上を向かせる。



「ああ、間近で見ると本当に美しい」



「!」



「あの男がどんな手を使ってでも手に入れたい気持ちが良く分かる」



「あの男…?」



「元の世界で君を襲った男のことだ」



「!!?」



「随分と執着されているな。君の拉致に失敗した時も酷く乱心していた」



あの時、ストールを掴んだ男がいた。まさか…あの男だとでも言うのだろうか?いや…それはあり得ない。だってあの男は元の世界にいるはすだ。



「貴方は…どうして私の秘密を知っていたの?一体、誰から聞いたの…?」



驚きを隠せず疑問を投げ掛けると、四木沼喬は含みのある笑みを浮かべた。



「全てその男から聞いた。君の秘密も、君の過去も、全て。」



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