第2章 新しい居場所-フクロウ-
「朱鷺宮さん」
「!」
「私、自分の足でちゃんと前に向かって歩きたいです。私の辿る道は、険しいかも知れません。壁は高く、簡単には登らせてくれないかも知れません。でも…何も知らないままは嫌なんです」
ぐっと拳を握りしめる。
「知らないまま前に進むより、知って前に進んだ方が、真っ直ぐに未来に向かって歩いて行ける気がするんです」
そう言って朱鷺宮さんを見ると、優しい眼差しで穏やかに微笑んでいる。
「歩いて行けるさ。だってお嬢さんには、立派な羽根があるんだから」
「羽根…ですか?」
「白くて大きな羽根だ」
「白くて、大きな羽根…」
ボロボロに折れた羽根を思い出す。
「(立派な羽根とは呼べない。あんなに傷付いてボロボロの羽根…。あの時、過ちを犯したりしなければ…。)」
「大丈夫」
「!」
「もし道に迷ったら手を差し伸べて、お嬢さんの進むべき未来を標してやる。もし高い壁から落ちて怪我をしたら傷薬くらいは塗ってやるが…代わりには飛んでやれないからね」
「朱鷺宮さん…」
「お嬢さんなら、しっかり自分の羽根で飛んで行けるさ。空に向かってな」
「はい…」
彼女の言葉が単純に嬉しかった。
そうだ、焦って飛ぶことはない。
ボロボロに折れた羽根のまま飛んでも
空を自由に飛ぶ前に落ちてしまう。
それならいっそのこと
傷だらけの羽根が治るまでは
ゆっくり休んでおこう。
「ま、そこにもう一つ付け加えるなら、一人で飛ぶよりは連れがいた方が楽しいかな、ってことさ」
「(…連れ…一緒に飛び立ってくれる人…)」
私と一緒に、空を自由に飛んでくれる人。
「(…そんな人が現れても、きっと私は…)」
思わずストールをギュッと握り締めた。
鏡の中の私は、まだ頼りない。
どことなく、哀愁に満ちた雰囲気がある。
「(一緒に幸せにはなれない───……)」
こんなんじゃ駄目だと、分かっているのに。だからせめて…おじい様の、フクロウの皆さんの役に立てるように頑張ろう。
「朱鷺宮さん、私、頑張りますね」
ふわり、柔らかく微笑んで見せると、朱鷺宮さんは驚いた表情を浮かべた後、嬉しそうに笑んだ。
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