第2章 新しい居場所-フクロウ-
「確かに歩いているとよく男性に声を掛けられることはありますが…知らない男性には注意するようにとおじい様からキツく言われていますので」
「さすが警視総監だな。お嬢さんの可愛さを良くわかってる。ふむ…久世とは違うタイプか」
「え?」
「いや、何でもない。ただの独り言だ。気にしないでくれ」
「は、はぁ…」
「しかしお嬢さんも、ほんっといちいち反応が新鮮で素晴らしい。これから暫く退屈しなくて済みそうだ」
「…私は、おもちゃではありません」
「もちろん、可愛い部下だと思っているさ」
「(その笑みが怪しい…)」
「じゃあ、次は風呂を案内するよ」
休憩ホールを出ると朱鷺宮さんは次にお風呂場に案内してくれた。
「ここが風呂。反対側の同じような扉は男子用だから間違えて入らないように」
「はい」
「ここを使うのは私と久世とお嬢さんだけだから、滅多にかち合うことはないだろう。ゆっくり使えるはずだ」
「ツグミちゃんもフクロウに?」
「ああ。お嬢さんより少し前にうちに来たんだ。彼女には特別な能力があるんだよ」
「特別な能力?」
「久世には、稀モノを見分ける能力がある」
「!稀モノを見分ける…?」
「弟さんの事件がきっかけで、彼女は特別な想いを抱いて書かれた稀モノが発する光を見ることができるようになった。私達はそれを『アウラ』と呼んでいる」
「アウラ…」
稀モノが発する光
私は、それがどんなものなのか知らない
でも彼女の眼には、映っているんだろう
特別な想いを抱いて書かれた
作者の強い情念や思念が──……
「そういえば、先程の研究室にいた女性の方達は、ここにお住いではないんですか?」
「ああ、向こうは向こうで別なんだ」
朱鷺宮さんの横で私は脱衣所にある等身大の鏡を見つめる。そこには、寂しげに瞳を揺らす、私が映っていた。
「(朱鷺宮さんの言う通りだ…)」
眉を下げ、悲しい顔で目を伏せる。
私はまだ、抜け出せないでいる
過去に犯してしまった、過ちから───。
この折れた羽根がある限り
空を自由に飛ぶことさえ
許されないだろう───……。
それでも……
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