第1章 空の瞳の少女-トリップ-
「…見るだけです」
「構わん!」
写真を受け取り、中を開いて相手の男の顔を確認する。確かにおじい様がSSSとランク付けして激推しする程の相手だった。
「どうだ!中々の美形だろう!」
「…そうですね」
「名前は──……」
おじい様が相手の男性の名前を告げる。でも私は正直乗り気ではなく、ほとんどの話の内容を聞いていなかった。
「縁談はあまり…」
「そう言って今までの縁談も断り続けておるではないか。この顔の何が不満なのだ?」
「誰も顔の話はしていません。別にこの方に不満などありませんよ。ですが縁談は結構です。相手の方には申し訳ないのですが、今回もお見送りしてくださいな」
「むむぅ…」
写真を閉じておじい様に返す。
「そうか…残念だな。あちらさんはお前の事を凄く気に入っておったのに」
「写真を見ただけなのに?」
「写真を見せただけじゃないぞ。この儂がたっぷりと時間を掛けて、お前がどれだけ魅力的な女性なのかを熱く語ってきた!」
「…ちなみに熱く語ってきたとは?」
「儂の愛する孫娘は、どの銀河よりも輝いていて、世界一の可愛さを誇り、まるで女神のような美しさと優しさを持って生まれた、最高過ぎる女性だと」
「な……っ!」
驚きの余り、開いた口が塞がらない。最早"熱く語ってきた"レベルを超えている。今の言葉を相手に伝えたというのか。
「何故そんな嘘を吐くのですか!!」
「嘘など言っておらん。全て事実だ」
「だとしても大袈裟に盛り過ぎです!」
「大袈裟なものか。全く、お前は自分を過小評価し過ぎなんだ。もっと自分に自信を持て」
「…そういう問題ではありません」
「今回の縁談は良い機会だと思うぞ」
「……………」
「一度、会ってみないか?」
おじい様の言葉に悲しげに笑み、私は首を横に振る。どんなに良い相手だとしても、縁談を受け入れるわけにはいかない。
「ハッ!もしや…!」
「何です?」
「お前が頑なに縁談を断り続けるのは、儂のようなカッコイイ男がいないからか!?」
「…はい?」
「女性には優しく紳士。カッコよくて気遣いも欠かさない。そんな男が現れないからお前は縁談を断り続けるのだろう?」
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