第21章 この世で一番美しい炎-マモルモノ-
「うわぁ!?何だこれ!?奇術か!?」
「熱……っ!おい、誰か火を消せ!!」
「全焼はさせないようにしますね。でも、火災保険に入ってなかったら申し訳ありません」
「(笑って恐ろしいことを言う翡翠がコワイ…)」
でも、と言葉を促す。
「(とても綺麗な炎…)」
「…朱鷺宮さん!俺は地下に行きます!」
「滉!私も一緒に行く!」
刹那、彼は悲しげな眼差しになった。けれど私が行くことを────拒みはしなかった。
✤ ✤ ✤
「この部屋…!?」
長い階段を降り、その部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、もうそこで足が動かなくなった。
「稀モノが…こんなに沢山…!?」
驚く私の双眸は稀モノを見たことで、空色の瞳が濃い光を放つ。
「ようこそ」
彼は、独り立っていた。誰もいないその部屋の中央に、何の武器も持たずに。
「おい、あんたは下がってろ!!」
滉が私を背後に押しやる。それでも私は、問わずにいられなかった。
「貴方…この本…」
「そんなに驚くことか?私が稀モノを集めていることくらいは知っているだろう」
「…こんなに沢山…」
私は顔をしかめ、アウラを凝視める。
「……紫」
「え?」
「その一番手前の稀モノのアウラは濃い紫だろう?」
「な……!?」
彼の言葉に、滉は驚いたように声を上げる。
「…その隣は、淡い青。その次は…白」
「う、嘘…まさか…」
私は並ぶその本と、彼を何度も交互に見遣る。
「そうだ。私もお前達と同じ…稀モノのアウラが視える人間だ」
「な……っ!?」
横を見ると、滉も言葉を失っている。彼も知らないことのようだった。
「ただ、残念ながら君達程に安定してはいない。視たいと願っても視えるわけでもない。むしろ、視えることの方が少ない。まるで…儚い蜃気楼のように」
「貴方まで…」
「だから『仲間』と言ったろう。だが今宵はとてもはっきりと視える。再会出来た喜びのせいかな」
「ま、まさか…冗談だろ、そんな…」
「そう思いたければ思っていろ、滉。どうせお前には視えないものだ。滉、お前は何処までいっても『選ばれし者』にはなれないのだ」
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