第21章 この世で一番美しい炎-マモルモノ-
「俺の処分は免れないだろうし、そういう意味ではあの制服を着る最後かなと思ってる」
「滉……」
「……───そもそも、生きていられるかどうか」
「うるせぇよ」
「隼人!?」
隼人の強い口調に翡翠が驚く。
「燕野が入った時も言ったけど、そういう命と引き替えにみたいなの俺は本当に嫌いなんだよ。大体、最後って何だ、最後って。朱鷺宮さんだって一言もそんなの口にしてないのに自虐過ぎ」
「(彼は本当にストレート…)」
「何処かの陰険な軍人に役立たずなんて言われるような仕事だぜ?物好きななり手なんてなかなかいないに決まってるだろ。この世から本がなくなるまでしっかり働いてくれ」
「……………」
その後の滉の百面相みたいな顔を、きっとみんな心に刻みつけたはずだった。
苛立ったような、照れたような、ほっとしたような、本当に複雑なその表情を。
───本人には、少し申し訳ないけれど。
✤ ✤ ✤
その夜、私達はナハティガルへと向かった。
「…あれ?お客さんがみんな帰って行きますよ?」
「…本当だ」
豪奢に着飾った客達が、次々とエントランスに向かっては何かを言われ、引き返してくる。
「いきなり休みなんて珍しいな」
「今までこんなことなかったのにねぇ。
まさか警察にでも…」
「しっ、馬鹿なことを言うもんじゃない」
そう囁きあう客が去って行った後、隼人がにっこりと笑った。
「俺達、特別ご招待なんだな。楽しそうじゃん」
✤ ✤ ✤
今日だけは、私とツグミちゃんも滉達と同じあの仕込み杖を持たせてもらっていた。
もっとも、付け焼き刃でどうにか出来るとは思っていない。護身用のナイフが、ちょっと大きくなったようなものだ。
「来たぞ!あいつらだ!」
「お待たせしました!
ご招待有り難うございます!」
「滉!やはりお前…裏切ったのか!」
「ああ……────そうだ!!」
振るった剣が、男を斬りつける。
「うあ、ああ……っ!?」
ホールの方に隠れていたのか
男達が次々と駆け寄ってくる。
「…面倒臭い」
そんな彼等を見た翡翠が、すっと手を翳した。
次の瞬間、紅の炎が彼等の足下に広がり、男達を阻む。
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