第21章 この世で一番美しい炎-マモルモノ-
「…無理だよ」
「無理じゃない」
否定的な言葉を吐いた滉が、私の掴んだ手から逃げようとする。逃さないように私は彼の手を繋ぎ留めた。
「俺と一緒にいたら、あんたは幸せになれない。きっとたくさん泣かせて傷つけるだけだ」
彼の表情が辛そうに歪む。
「いいよ」
「!」
「たくさん泣かせて傷付けたっていい」
「何言って…」
「だって…滉が私にすることは、全て私を思っての事だって知ってるから」
「っ…………」
「だから…ね?そんなに自分のことを下に見るのはやめて。貴方はとても優しい人で、私はそんな滉を好きになったんだから」
「……………」
躊躇った様子の滉を見て、私はそこで掴んでいた手を離した。
「それに…少なくとも今は滉はフクロウに籍を置いてる。だからきちんと朱鷺宮さんに報告すべきだと思う。滉はまだ私達の……────仲間でしょう?」
✤ ✤ ✤
作戦室にみんなを集めて手紙の件を報告した。
「…地下というのは、あそこのオークションの部屋のことです。ホールの奥の貴賓室の、一番突き当たりに部屋があって、そこの油画が地下への入り口なんです」
「…そんな仕掛けが」
「ここと同じです。元は地下壕だったものを改造したようです。特に変更がなければ…今夜はオークションも何も開催されない日です」
「……………」
「そういう意味では他の客を巻き込まずに済むかも知れませんが…裏を返せば、奴一人しか捕まえることは出来ないと思います。もちろん、それでもあそこには多くの部下がいますし、罠という可能性も高いですが」
「別にこの招待状には独りで来いとも書いてない。せっかくだからみんなで冷やかしに行こうじゃないか」
「ですよね!」
「隼人…」
苦渋の面持ちで、滉が隼人を、そして翡翠を見た。
「何か言いたいことがあるなら話せよ。朱鷺宮さんから粗方聞きはしたけど…もし、お前の言葉で喋ることがあるなら」
「…………っ」
滉は微かに怯んだように身動ぎ、小さく息を吐いた。
「…俺は、この一年近く…フクロウを裏切ってた。捜査や稀モノについての情報を流していた。それが許されるとは思ってない」
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