第20章 刻みつけられた熱-スキ-
「……は……っぁ……っ」
「んん……っ」
噛むように荒々しく貪られ、それでも私はちっとも怖くはなかった。
「…さっき…知りたいって言ったよな?俺が何を考えているか…何を望んでいるか……っ」
「あ、きら…っ」
「俺が考えてることなんて…たった…一つだよ…っ」
口付けの隙間で彼が苦しげに告げる。
「あんたを…あの男に奪われたくない…っ、あの男に奪われる前に…俺が奪いたい…、この俺だけのものにしたい……っ、そんな…下らない…ことだよ……っ!……ん……っ!!」
「んぅ!」
全身の骨が軋む程にきつく抱き竦められ、その激しさに私の躯の奥底がざわめく。
「俺以外の誰かが…あんたに触れるなんて嫌だ。そんなのは…絶対に許さない。今夜だって…そうだ。…店の前で、あいつが腕を掴んだ時、頭の中が真っ赤になって…あんたが俺以外の誰かのものになるんだって思ったら…」
「…でも、今度は滉が…」
「そんなこと考えてる余裕なんてなかったんだよ!無意識で…身体が勝手に…っ!」
彼の声に自嘲めいたものが混ざり込み、指先が更に私の顎に食い込む。
「俺に…あんたをくれ。俺が…たった一つ欲しいもの…あんたを…この俺のものに…させてくれ…」
その言葉を聞いた瞬間、心の底から溢れ出す嬉しさがこみ上げ、私は目に涙を浮かべた顔で、微笑んだ。
自分の気持ちに…もう、嘘は付けなかった。
「……───奪って。貴方以外に触れられたくない。貴方以外のものになりたくない」
「…………っ」
「貴方のその身体に黒い羽根が刻まれていても…関係ない。私は『鴻上滉』を…愛したの。だから貴方も『私』を愛して」
「…愛している?あんたが…俺を?」
「そうだよ。私は貴方を…愛している。幸せを望めない私に…貴方がその権利をくれたの。だから私は今、とても貴方が愛おしい」
「っ!」
「好きだよ、滉。
貴方をこの世で一番、愛してる」
「詩遠……───っ!」
彼の中の熱は、容赦なく私の中のそれを揺さぶり起こした。
「…んっ…はぁ…、っ……」
「ふっ…んん…ッ」
幾度も唇が押しつけられているうちに羞恥心は消え失せ、私はただ猛る波に飲み込まれ、藻掻くしか出来ない。
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