第20章 刻みつけられた熱-スキ-
息をすることと、彼を凝視めることだけで精一杯だった。
「詩遠…。…もっと…はしたない女になれよ…っ。もっと俺の名前を呼んで、もっと…俺のこと欲しがれよ…っ。あんたが…言ったんだから…知りたいって…っ」
「滉……っ」
「俺のことを全部知りたいって…言ったんだから…っ」
いつも、ほんの少し冷めたように私を、私達を眺めていた。
だから彼の感情が分からなくて、怖くなったこともあった。けれど本当は彼の中に、こんな熱があったのだ。
「だから…教えてやるよ。俺が考えてたこと…思い知ればいい…!」
終わりのない口付けに、涙が滲む。頭の中はもう真っ白で、何も言葉が浮かんでこない。
「滉……滉……っ」
私は繰り返し彼の名前を呼び続けた。
そうする度に愛しさが降り積もり、私という存在は彼によって満たされてゆく。
「…好きだ。俺は…あんたのことが…欲しくてたまらないんだ。好きだ……────っ」
溢れ出す想いに堪えていた涙が頬を伝う。
「あの時、たくさん非道いことしてごめん…」
「…気にしてないよ」
「怯えさせて…泣かせて…ごめん」
「滉……」
「嫌がるあんたを無理やり襲って、最低な言葉で傷つけて、怖がってたのに…止めてやれなくて本当にごめん…」
「大丈夫だよ。でも…あの時は流石に怖かったから…もうあんなことはしないでね?」
「ああ…分かってる」
遠慮がちに伸びる滉の手が、涙を伝う私の頬に優しく触れる。
「じゃあ許します」
「っ…………」
「はい、もう謝るのは禁止です」
「…優し過ぎるのも良くないよ」
ふっと小さく笑って言った滉は、もう一度、顔を近付けて、私の唇に口付けを落とした。
「…んっ…は、ぁ…っ」
「あ…っ、ん…んぅ…」
「…そんな声出すなよ。
襲いたくなるだろ」
「っ!」
「これでも理性保ってるんだから…煽るの禁止」
「煽って…ないのに…」
「その声も体も…一々エロくて困る。」
「そ、ゆ、こと…言わないでっ」
「好きだ」
「!…うん、私も好きだよ、滉。」
満面の笑みを浮かべて言えば、彼は柔らかく細めた目で、小さく笑った────。
next…