第20章 刻みつけられた熱-スキ-
「…そんなこと、どうでもいいだろ」
「どうでも良くない!殺されるかも…知れないんでしょう?私はそんなの絶対に嫌」
「…………っ」
「お願い、本当のことを話して。
私…滉の本当の心が知りたいの」
「……本当の心、って」
唇の端を僅かに上げて、彼は小さく嘲笑した。
「そうだよ」
「その言葉、後悔しない?」
「…しない」
「何故そう言い切れるの?」
「……───知りたいから。貴方が考えていることを、貴方が望んでいることを、貴方が苦しんでいることを、総て知りたいから。……我が儘かも知れないけれど。それが今の私の望みだから」
「……────望み、ねっ」
滉が強く私の腕を引き、そのままベッドに押し倒す。勢い良く沈んだスプリングが音を立てた。
「きゃ……!?」
「あんたは本当に世間知らず過ぎる。こんな真夜中に男を部屋に入れるなんて」
きつく掴まれた顎が、ほんの少し痛い。けれど滉のその指も、ほんの少し震えている。
「…違う。幾ら私だって…その意味くらい…分かる。貴方が…そうしたいのならそうすればいい。私は…逃げないから」
「何……言って……っ」
「ただ…その前に答えて欲しいの。滉があの人と兄弟だということは分かった。でもそれだけの理由で…仲間になったの?」
「………!?」
「私はそうは思えない。少なくとも私が知っている滉は…簡単に誰かを裏切ったり傷つけるような人じゃない」
「…こんな時に、興醒めするようなこと言うなよ」
「冷やかさないで」
私は彼を凝視めた。
私を見下ろし、私の自由を奪い、思いのままに振る舞えるはずなのに、彼は何故こんなに苦しげなのだろう。
「私は…朱鷺宮さん達に比べたらまだまだ滉と過ごした時間は短くて、知らないこともあるかも知れない」
私は真っ直ぐに彼の眼を凝視める。
「でもそんな時間の中で私が見ていた滉は…映画を観て泣いたり、一緒に月に行ってくれるって言ったり…酔っ払いに絡まれている女の子を助けてさっさと帰ってしまうような…そんな人だよ」
「…何だよ、それ」
「些細なこと過ぎて覚えていない?以前に貴方は雨月堂の前で立花家の使用人を助けてくれたんだよ」
「………………」
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