第20章 刻みつけられた熱-スキ-
「……滉」
「おやすみ」
一緒に作戦室を出て無言で二階まで階段を昇ると、彼はそこで素っ気なく言った。
けれど、私の気持ちはちっともおさまらない。
「…どうして?」
「部屋に行け」
「…どうしてあんなこと…したの」
「早く部屋に行けって」
「話してくれるまで動かない。
運ぼうとしたら悲鳴を上げるから」
「…………!」
苛立ったように歩き出そうとした滉の腕を、私は咄嗟に強く引いた。
「待って!」
「…離せよ!」
「あ、あの…お二人とも、喧嘩は…」
私達の声を聞きつけて、鵜飼さんの部屋から雉子谷さんが現れる。
「それと出来れば廊下ではもう少し静かにしていただけると…お坊っちゃまはもうお休みですので」
「ご、ごめんなさい…」
「…済みません」
「よろしくお願いいたします」
雉子谷さんが頭を下げて部屋に戻った後、微妙な沈黙が降りる。
けれど、どうしても諦めたくなかった。知りたいことが、彼に確かめたいことがあった。
「滉、私…」
私が言い掛けたその時───滉が不意に私の手を強く掴んだ。
「あんたの部屋に行きたいんだけど」
「………え」
「流石にここで話せる内容じゃないし。ただ…聞いたらもう後戻り出来ない。それでも……────構わないなら」
「……構わないよ」
私がそう答えても、彼は何も言わなかった。
✤ ✤ ✤
「……………」
「……………」
「……話って」
「……それは」
そうして部屋に来たものの、彼はやはりまだ迷っているようだった。居心地悪そうに何度も視線を逸らし、大袈裟な溜息を繰り返す。
「そんなに話しにくいこと?なら、私から…先に聞いてもいい?」
「……………」
彼はまた黙り込む。
そのまま逃げられてしまいそうな気がして、私は自分を必死に奮い立たせて問うた。
「……どうして?」
「……何が」
「どうして私を連れて逃げたの」
「……………」
「あの人達、言ってた。……裏切るのかって。滉は…一体何がしたいの。本当は味方なの?それともやっぱり…敵なの?あんなことしたら…滉が一番危ないんじゃないの?どうして…?」
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