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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第19章 決断-ユウキ-



朱鷺宮さんは何も言わず煙草を唇に挟み、先を小さな炎で焦がす。



「申し訳ないが、先に戸籍の方を調べさせてもらった。正直に話してくれて嬉しいよ、滉」



「…そうでしたか」



「君が本当に私達の『敵』なら排除しなければならない。それが私の仕事で責任だ。だが暫く見ていたところ、どうも様子がおかしい。君がまさか真夜中にアパート近くで痴話喧嘩をするような男だったとは」



「と、朱鷺宮さん!?」



「人付き合いが面倒だと言ったじゃないか」



「……………」



「他に話すことはあるか?」



朱鷺宮さんがふっと白い煙を吐いた。



滉はやけに静かな表情で彼女を見ていたけれど、やがて───微かな溜息の後で口を開いた。



「朱鷺宮さんや猿子さんが想像している通りです。カラスがオークションで扱っている稀モノは偽造品です」



「……そうか」



「百舌山が、研究の最中に突然生み出したものと聞いています」



「…偶然、か…」



「最初は陸軍に接触したそうです。恐らく…洗脳の道具として。ただそこまで我が国の軍部は愚かではなかったらしく、相手にされなかった。ただ一人を…除いて」



「(一人を除いて?)」



「…あの尾鷲が、興味を示したらしく、そこから話が繋がったようです。『四木沼喬が稀モノを集めている』というのはそれなりに有名でしたから。オークションの売り上げはそのまま百舌山の懐に入り、奴の研究資金となっているようです」



「……………」



「四木沼にしてみれば…あの程度は端金ですからね」



「ということは、やはり金が目的ではないんだな?」



「恐らく、ですが…傀儡政権化です」



「やはりそうなのか?だがそれならわざわざ貴族院を退くこともないと思うが…。まぁ…裏で糸を引きたい、という奴は何処にでもいるか」



「それに関しては断言は出来ません。そもそも滅多に言葉を交わすこともありませんでしたし、彼の行動からそう思っただけです」



「……そうなのか」



「更に…もう一つ。もしかしたらあの男にはこちらの方が重要なのかも知れません。あの男は…あの男こそが、稀モノの蒐集家なんです」



「!?」



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