• テキストサイズ

たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第19章 決断-ユウキ-



「……───しっかり届けてくれ」



「大丈夫だよ、俺達だってまだ殺されたくない」



「(身が竦む…)」



「じゃあ、行こうか」



田淵と呼ばれた人が私に手を伸ばす。



私は反射的にビクッと体を跳ねさせる。



「…触らないで下さい…一人で歩けます…」



「そんなに怯えるなよ。俺達はあんたをあの人の所まで連れて行くだけだ。ほら、分かったらとっとと歩け」



「や……っ!」



彼が私の腕を力強く掴んだ時だった。



「……離せ!!」



「うあぁぁ……っ!?」



「きゃぁぁ!?」



突然、殴ったような鈍い音がすぐ側で聞こえて咄嗟にしゃみ込む。けれどそんな私の手を、誰かが強く引っ張った。



「立て!走れ!」



「滉!?」



「おい待て滉!お前何してるんだよ!!裏切るのか!?」



そう叫んだ男に滉は拳をぶつける。



「ぐあ……っ!?」



その場にいた男達をあっという間に殴り倒し、滉は私の手を再び掴んで走り出した。



✤ ✤ ✤


「滉……っ!待っ……っ!」



「うるさい!」



「!?」



走る速度が違い過ぎる。



疾走する滉に合わせるのは容易ではなくて、私の足は何度ももつれそうになる。



それでも彼は私の手をきつく掴んだまま走り続け、やがて見つけた空きのタクシーを停めた。



「センタギまで!急いで!」



✤ ✤ ✤


「あ、滉……」



「…黙ってろ」



「で、でも…私…あそこに行かなきゃ…」



「黙ってろって言ってるだろ!」



「ちょっとちょっとお二人さん!
喧嘩は降りてやってよ!」



「……………」



「す、すみません…」



私は勢いよく頭を下げ、横の滉を見遣る。



「……滉」



「何も言うな」



「黙ってられるわけないでしょう!どうしてあんなことしたの!あれじゃ滉だって…」



「いいから静かにしてろ!」



「でも!」



「ちょっと!静かにしてくれないと本当に降ろすよ!」



「…申し訳ありません」



「済みません、黙ります」



✤ ✤ ✤


「……滉」



「喋るな」



「もうタクシーは降りた!」



「降りても黙ってろ」



「……───なら、ここからもう一歩も動かない」



.
/ 525ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp