第19章 決断-ユウキ-
「(…滉は部屋にいるのかな。)」
二階に降りたものの、私は階段から動けずにいた。彼の部屋を尋ね──伝えるべきことがある。
「(部屋は…あそこだな。)」
私は扉の前に立ち、扉を叩く。
「…滉?」
もう一度、扉を叩いても声は返らない。
「(出掛けてるのかな…)」
微かな不安を抱きつつ、私は一階に降りた。
「…滉!」
「…………っ」
ホールに向かうと、玄関から彼が歩いてくるのが見えた。
「何処かに…行ってたの?」
「アパート前に黒い羽根でも撒きに行ったと思った?」
「そんな言い方…」
「…ただの散歩だよ」
「……そう」
彼はあからさまに私から目を逸らし、横を擦り抜けようとする。
「待って!大事な…話があるの。私の部屋まで来て」
「……………」
「こ、断っても連れて行く…」
段々声が小さくなり、視線を床に落とす。
踵を返した滉が歩き出したのを見て、声を投げかけた。
「あの待っ……」
「話があるんだろ」
「あ、うん…!」
先に歩き出す滉の後に続いて、私は自分の部屋に彼を招き入れた。
✤ ✤ ✤
「滉にだけは伝えておこうと思って」
「…何を」
「…私、これからナハティガルに行く」
「な!?」
「これ以上、犠牲が増えるのにもう耐えられない」
「あんた、みんなの話を聞いてないのか?目的はフクロウを潰すことで…」
「でも、私に執着しているのは確かなの。殺されず交渉出来るかも知れない。あの人は…言ったもの。いつでも尋ねて来いって」
「…馬鹿か?自分が行ってどうにかなると本気で思ってるのか?」
「…それは」
「あんたに交渉なんて無理だ、そのまま言いくるめられて仲間にされるだけだよ。それともまさか、あいつらの仲間として生きていこうなんて考えてるのか?」
「そんなこと考えてない。ただ、私ならあの人を止められるかも知れないと思って…」
「そんなの口先だけだろ。俺のこと引っぱたくくらいなら構わないけど、向こうに行ったらどんな目に遭うか分からないぜ」
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