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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第19章 決断-ユウキ-



翡翠も滉も、何も言わない。



ただただ重苦しい空気の中
私達はひたすら本を探し続けるだけだった。



そして夕暮れは夜に色を変え…。



流石にもう『残業』する余裕などなかった。
アパートの近くの道を、私達は項垂れて歩く。



前を歩く滉の背中を見ていると、この道での幾つもの出来事を思い出さずにはいられない。



『…大丈夫だよ』




「(今夜…もう一度、滉と話してみようかな。
それとも私の話なんてもう…)」



✤ ✤ ✤


「…ただいま戻りま…」



「お帰り!大変なことになったよ!」



「!?」



疲労し切って戻った私達を出迎えたのは慌てふためく隠さんの声だった。



何かを聞く前から、もう躯が竦む。



「燕野君が…燕野君が何者かに撃たれたんだ!!」



「う、撃たれた!?」



「…………っ!?」



「少し前に連絡があってね、朱鷺宮君が行ったよ」



「…そんな…」



「取り敢えず生きてはいるようなんだが
詳しい容態はまだはっきり分からない」



「それは…やっぱり…」



「止めて、翡翠!」



反射的に叫んだものの
その場の誰もがもう確信していた。



「燕野さんまで…そんな…」



「落ち着きなさい、とにかくみんな一度部屋に戻ってそのまま待機を」



✤ ✤ ✤


部屋に戻り、着替えた後、私はフクロウの制服をぼんやりと眺め続けていた。



「(もし私がカラスの仲間になったら…もうこれを着ることはなくなるのかな。)」



絶望感の中に、自分でも不気味な程の怒りがあった。



「(燕野さんまで…)」




『おはようございます!』



『自分は警視庁保安部巡査、燕野太郎と申します!』



『本日より皆様とご一緒させていただくことになりました!よろしくお願いいたします!』




「(次は…ここにいる誰かかも知れない。)」



みんなの顔が次々と浮かんで、それがまた更に私の中の憤りを燃え上がらせる。



「…四木沼喬。何て…卑怯な男なの」



一旦心を落ち着かせようと思い、バッグの中からスマホを出し、ロックを解除する。



「……………」



試しに、電話のアイコンをタップしてみる。



「…反応なしか。そりゃそうだ…」



分かっていても、ショックだった。



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