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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第18章 漆黒の策謀-アウラ-



「本だ!こいつ、やっぱり例の奇妙な本のせいでこんな!!」



「あ……!あの、落ち着いて下さい!
私達は帝国図書……」



「帝国図書!?ってことはこの騒動はあんた達のせいなんだな!?」



「え!?」



「帝国図書なんとかってのは、妙ちきりんな本を探し出すところなんだろ!あんた達がしっかりしないからこんなことになったんじゃないか!役立たずめ!」



「違います!この本は危険なものではないんです!どうか落ち着いて下さい!」



「そんなこと言って誤魔化すつもりだろう!
本が落ちたのを見たぞ!」



「違……っ!」



投げつけられる雑言に構っている余裕はなかった。



「(とにかくあの本を…拾わなきゃ…!)」



けれど、混乱する多くの通行人達に揉みくちゃにされてしまい、全く本まで近付けない。



「…通して!通して下さい!」



私が叫んだその時、見知らぬ男がその本を拾い上げた。



「っ、駄目です!?その本を開かないで!
こちらに渡して下さい!」



けれど男は本を抱えたまま、器用に人の間を縫って遠離って行く。



「そこの人!待って…!行かないで!その本は大切なものなんです!お願い、ここを通して…っ」



そしてその男が見えなくなるその瞬間。



「通して……────!!」



✤ ✤ ✤


「まぁそう落ち込まないで立花君。
君のせいではないよ」



「…すみません」



「星川君もその男を見たと言っているし、そんな状況では拾い上げられなくても仕方ない」



「…ですが」



あの後、到着した警察隊によって騒ぎは収められたものの、証拠の本を逃してしまった悔しさと申し訳なさはどうにも拭えない。



朱鷺宮さんと隼人が警察に呼び出されてからもう数時間経っている。



日付はもうすぐ変わろうとしていた。



「悔しいのは分かります。でも殆ど暴動と化していて、とても本が拾える状況ではなか…」



「…違うの。……違うんです」



私は本を手にした男の顔を思い浮かべた。



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