• テキストサイズ

たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第18章 漆黒の策謀-アウラ-



「…立花。それ、本当に稀モノなのか」



「!?」



今度は私が反射的に本を庇う番だった。



「……どうか?」



「あ、な、何でも…」



そうだ…滉は…カラスの…仲間……



背筋に冷や汗が伝う。



翡翠も、一般のお客さんである累だっている。流石にこんなところで襲われたりはしないだろう。



「…笹乞さん。これ、稀モノみたいですね」



「…あれぇ?そうなんだ?」



「……そうなんですよ」



手に触れても、熱くはない。



「もしかして気付いていませんでしたか」



「ぜーんぜん」



「とにかくこれはお預かりします」



滉は顔色一つ変えず、それを翡翠に手渡した。



翡翠が腰の袋から油紙を取り出し、本を丁寧にくるむ。



「笹乞さん。一つ確認したいのですが、先日もこの店で販売していた本が稀モノだったということがありましたよね。しかも著者は…貴方でした。この本はまた違う作家のようですが」



「(……滉?)」



「…なーにが言いたいのさ。本屋に本があっておかしい?その中に偶然妙な本の一冊や二冊あったって不思議じゃないと思うけど?」



「……………」



「ああ、でもあんた達はボクを悪者にするのが好きだったね。もしかしてボクを犯人に仕立て上げようとしてるぅ?」



「…笹乞さん。私達は決してそのような…」



私がぎこちなく笑んだ────その時。



「白を切るなよ。そう何冊も立て続けに一軒の店から稀モノが出るなんておかしいに決まってるだろ」



「!?」



「あ、滉!?」



翡翠は驚いた顔で滉を見る。



「…何なの、あんた」



「あんたもカラスの手先なんだろ、どうせ」



「滉!?」



『あんたも』と。



無表情に口にしたその言葉に、私は凍りつく。



はっと翡翠達の方を見ると、突然の滉の行動の方に気を取られているらしい。



「…名誉毀損って知ってる?訴えちゃうよ?」



「どうぞ」



「滉!止めて!」



「…なら、今すぐ警察に駆け込んでやる!」



「え、あの!笹乞さん待って下さい!」



慌てた翡翠が笹乞さんの前に立ちはだかる。



「どけよ!ボクを侮辱した奴を懲らしめなきゃ気が済まないんだよ!」



.
/ 525ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp