第17章 獲物-キョウハク-
「瑞稀…長谷君…」
そこには一枚の写真が入っている。学生の頃、写真部が私と瑞稀と長谷君を撮ってくれた。お守り代わりみたいなものだ。
「私…どうしたらいいの…?」
返事なんて返ってこないのは分かっている。それでも問わずにはいられなかった。
スマホの電源を入れると、写真のアイコンを押して、スクショしてあった記事を見る。
【夜道に女子生徒が乱暴され、無職の男が逮捕された。男は女子生徒が通る道で待ち伏せをし、背後から襲い掛かり、無理矢理ビルの中に引きずり込んで犯行に及んだ模様。】
【女子生徒の証言が決め手となり、逮捕された男は裁判で有罪判決を受け、今もその刑が執行される日を待っている。】
【男の供述によると罪を認めていて、違う女子生徒を襲おうとしたが逃げられて犯行は失敗。その後、偶然見かけた女子生徒に一目惚れをし、ストーカー行為が始まり、そしてあの夜、犯行に及んだとの事。】
【男は罪を犯した事を悔やんでおり、被害を受けた女子生徒とその家族に謝罪したいと、毎月5枚にも及ぶ手紙に謝罪の文章を綴り、送っているという───。】
「……………」
それ以上見たくなくて、写真を閉じた。
「…あれのどこが謝罪の手紙なの。罪を悔やんでる?冗談じゃない。ちっとも反省なんてしてない…ッ」
気持ち悪いと吐き捨て、苛立ちを浮かべる。
「この事件を早く解決して、元の世界に帰る方法を探さないと…」
口に出すが心は沈んでいた。
「私はこの世界には本来存在しない人間なんだから…」
何もかも忘れて帰らなきゃ…
今度は検索を使ってキーワードを入力する。
「"過去にトリップ""帰る方法"…と」
画面をタップした。
「…色々制限されてる」
それは大正時代にはまだ存在していない物。例えば水族館や遊園地、プラネタリウムや東京スカイツリーなど。それらに関する情報は何一つ該当しない事が分かった。
「あ…この記事…」
検索されたキーワードを元に、情報がズラリと並んでいる。その中でも気になるのが二つ。
【満月の夜に透明な扉が現れて、それを通ると元の世界に帰れる方法。】
【その世界で一番最初に自分がいた場所を目印に元の世界に帰れる方法。】
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