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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第17章 獲物-キョウハク-



「(彼女達は全員体術を心得ている。剣道を得意とする者、空手や合気道を得意とする者。決して可愛いからと侮ってはならない。おじい様が雇ったうちの使用人は…最強揃いなのだ。)」



「別に助けてくれたからって善人だなんて思いませんよ?ただあれだけ人がいた中で彼だけが助けてくれて、しかも口説きもしませんでした。こんな可愛い娘を前にして!」



「(滉はそういうタイプじゃないしな。)」



「ということは下心はなくて、純粋な人助けだったんですよ」



「…そう」



「彼、優しい方ですね」



彼女は笑んで、カップに口を付けた…。



✤ ✤ ✤


「…あれ?どうかしましたか?」



「ああ、お帰り」



「…お帰り」



私達がアパートに戻ると、ホールで紫鶴さんと朱鷺宮さんが深刻な表情で立っていた。



それだけでもう、不吉な予感しかしないのは私の心がもうおかしくなっているのだろうか。



「まさか…また何か…あったんですか」



私の問いに、二人が顔を見合わせる。



「…実は、美沙宕が何者かに刺された」



「美沙宕さんが!?」



「幸い、帯の上からだったものだから、傷は浅くてね。致命傷にはならなかったんだが…。彼女は、変な奴に追い掛けられているから置屋に泊めてくれと言ったらしくて」



『あと変な奴に追っ掛けられてるとか理由つけて、暫く置屋に寝泊まりでもしろ、とも』



「ただほんの僅かの間…近所に買い物に出た時に」



「そんな…」



彼女は、言いつけを守ったのに。



ただ私達に話してくれた──だけだったのに。



「これは……───やはり僕のせいかな」



「それはないですよ!」



咄嗟に私は叫んでいた。



「…違います。絶対に紫鶴さんのせいでは…ないです。ぐ…偶然かも…知れませんし。嫌な偶然…ですが…」



「…有難う。優しいね」



「………、……失礼します」



「あ………っ」



翡翠が何か言い掛けたが、私はそのまま自分の部屋に戻った。



「…まさか…」



灯りをつける気力もないまま、私は扉の前にしゃがみ込んだ。



「でも、こんな偶然…」



よろりと立ち上がり、隠すようにベッドの横に置かれたバッグに手を伸ばし、身分証が挟んである手帳を開いた。



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