第16章 裏切りの夜-シンジツ-
最低な言葉だ。もし両手の自由が利いていたら、私は彼を思いきり引っ叩いていた。
「滉…お願い…本当に止めて…」
「止めないって言っただろ」
「や、です…怖いから…止めて…」
「大丈夫。あんたが大きな声さえ出さなければ、みんなには聞こえないから」
「違っ、そういうことじゃ…!」
「それとも…あんたは見られてヤる方が好きなわけ?だったら、今から隼人達を起こしてここに呼んで、俺達のやってるとこ見てもらおうぜ」
「っ、いい加減に…!」
悔しくて悔しくて涙が溢れる。止めて欲しいのに止めてくれなくて。話を聞いて欲しいのに聞いてくれなくて。そんなもどかしさが心を締め付ける。
「あんたは男を誘い込むのが上手いな。ナハティガルでもあんたのこと卑しい眼で見てた奴、たくさんいたよ。気付いてた?」
「!」
「気付くわけないか。あんたそういうの疎そうだもんな。おかげで…変なのには目を付けられて、誘拐されかけて…危険なことに首突っ込んで…。もしかして…そういうプレイが好きだった?」
「そんなわけないでしょう!?」
「それが望みなら叶えてやるよ。今から宿に連れ込んであんたのこと犯してやろうか?快楽に勝てないあんたは何度もイキ続けて、気持ちいいのが止まらなくなるよ」
「やめ、て…」
「俺はあんたが泣いて叫んでも、気絶しても、おかしくなっても、絶対に止めない。あんたが孕んでも、俺には関係ないことだから」
「…………っ」
身体が恐怖で震え始める。
「こんなエロい体しといて、犯すなって言う方が無理だろ。ほら…泣いてないで、足開けよ」
「滉…お願い、だから…」
「あんた…しつこいな。ああ、それもあんたの戦略?嫌がるフリして、わざと男の方から手を出させようってこと?本当…淫乱だな」
「あ…あいつと…同じこと…しないで…」
「!」
「滉はあいつと違って…絶対…非道いこと…は…しない。だから…こんなことは…もう止めて…」
「……………」
「滉……───っ!!」
「……くっ!!」
悲鳴じみた叫びが、自分の声ながら耳障りだった。滲む涙を拭いたいのに、手が動かせない。
「……っぅ……」
私はきつく唇を噛んだ。
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