第16章 裏切りの夜-シンジツ-
「……───他には?」
「他……」
『…お前達の行動など筒抜けだ。
何故なら裏切り者がいるからな』
「どうしたんだよ?他にもまだ何かあるのか」
『私の言葉を疑うのなら、捜してみるがいい』
「(…違う。あんなものは…嘘。私を混乱させようとして言ったに決まってる。)」
「おい、黙ってないで言えって」
「…あの、滉。……………。四木沼喬が…言ったの。フクロウの中に…裏切り者がいるって」
「え……」
「でも、そんなの嘘に決まってるよね?誰かがカラスの仲間だなんて、絶対に違うよね?」
「……………」
「私達の中の誰かが裏切ってるなんて…そんなこと有り得ない」
「…裏切り」
「そうでしょう?隼人だって滉だって翡翠だって、他のみんなだって、そんなことするわけな…」
言い掛けたところで、突然滉が私の腕を強く引っ張って、寝椅子に押し倒した。
「…きゃ!?」
「……───全く、あんたは本当に世間知らずで箱入りで、どうしようもない」
「……滉?」
「裏切り者は俺だよ」
「……え?」
「カラスの仲間は……───俺だよ」
「滉…あ…!?」
「…………っ!」
「……んっ……!」
スカーフを剥ぎ取られると、痛みを感じる程きつく首筋を吸われる。
悔しさと恐怖で目の前が真っ暗になった。
「さっき…あんたはあいつと何もなかったとか言ったけど、本当かよ。あいつは…そんなに甘くないけどな」
首筋を撫でられて、びくっと震える。
「あぁ…これか。あんたが首元を隠す理由。…誰かに首でも締められたのか?」
「っ………!」
「手の跡だよな、これ。」
「やだ…離して…」
「離す訳ないじゃん」
今度はくっきりと残る手跡の上から、唇を押し当てられ、きつく吸われる。
「やっ……!」
「は…良い声で鳴くな」
両手を拘束され、身動きが取れず、私は混乱したまま滉を見上げる。
「本当は抱かれたんじゃないのか?
だったら今度は俺の相手もしろよ」
「滉……っ!やめ……っ!」
「あんたはさ、大人しそうに見えて案外手が出るのが早いんだよな。だからこうして…おかないと」
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