第16章 裏切りの夜-シンジツ-
身を捩らせれば捩らせる程、無様にスカートが捲れ上がるだけで、全く逃げ出せない。
「…離して。この手を…離して!!」
恐怖に震える躰にムチを打って、涙で潤む表情で彼を睨みつける。
「私は絶対に貴方の仲間になんてならない!」
ここで負けてしまえば、あの時の二の舞だ。私はもう二度と、あんな思いはしたくない。
「私に触らないで!!」
「ここまで気が強いと躾甲斐がありますね」
彼が温度のない声でそう言い、私の喉を軽く締めた。
「く、う……っ」
「まぁそれはそれで…楽しみなのだが」
「きゃあ……────!?」
冷たい指が私の膝をきつく掴み、本能的な恐怖に全身が強張る。
「止め……っ」
「さっきまでの威勢はどうした?」
「こ、の……っ」
私は必死に自分を励ました。
泣いている場合ではない。
こんな男に。
こんな────。
「…止めて!こんな…こんな真似、許さない!
絶対に貴方のことを捕まえてやるから…っ!」
「…捕まえる?はは、面白い。
だが生憎とそれは叶わないだろう」
「そんなことない!絶対に…っ」
「…お前達の行動など筒抜けだ。
何故なら裏切り者がいるからな」
「!?」
その言葉に───私の全身から一気に力が抜けた。
「な、に…言って…」
「私の言葉を疑うのなら、捜してみるがいい」
嘲笑と共に足がぐっと押し広げられる。
「…ナイフ?はは、一応はこんなものを持たされてはいるのか。だがその格好では何の役にも立つまい」
その言葉に、冷たい絶望が湧き上がる。
「や……っ!」
それでも、私は死に物狂いで暴れ続けた。
「(こんな男に…汚されるなんて…)」
あの夜の出来事も、同じだ。
何で私がこんな目に…!
「やめ、や……っ!いや……っ、いや……!」
「ああ、肌は本当に白くて噛み癖が付いてしまいそうだ」
「いや!触らないで!お願い!!」
「その唇も…甘くて美味しいのだろう」
「っ!嫌!嫌ぁ!助けて、助けて、滉……───!!」
「…………っ」
何か音がしてドアの方を見る。
「……………」
「!?」
「……薔子」
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