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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第16章 裏切りの夜-シンジツ-



「(瑞希の死がショックで記憶が抜け落ちてたけど…思い出した。あの赤い本は…稀モノだった。)」



ズキッ



「うっ……!」



急に両眼が痛み出す。



「お嬢さん、これを見てもらおう」



四木沼は一冊の黒い本を私に見せる。その瞬間、空色の瞳が、濃く光を放った。



「ふふ…ははははっ!」



「!?」



それを見た四木沼が不気味に笑い出す。



「成功だ。これで貴女は視えなかったアウラが再び視えるようになった!」



「(今ならハッキリと視える。この人が手に持っている本は…正真正銘の稀モノだ。)」



そして、あの時の彼のセリフも思い出した。



『彼女は自殺だった。窓から飛び降りたのも、自分の意志だった。だから…』



『お前のせいではないよ』



『そう、だって彼女は───……』



「("彼女は"……)」



『本に殺されたのだから……───』



「……………」



恐らく瑞希は、あの本を開いてしまった。そして暗示に掛かったように、窓から身を投げた。だから彼女の側に稀モノが落ちていた。



「(そういう…ことだったの。瑞希も犠牲者だった。ただの…自殺ではなかった…)」



瑞希が死んだのは自分の意志ではなく、"稀モノによる影響"だった。



彼女は、恭彦さんと同じで…本に殺されたのだ。



「(あの時、長谷君が見せた黒い本も…もしかすると稀モノだったのかも知れない。)」



え?ちょっと待って。



もし、それが本当なら…



「(何で彼は、稀モノの存在を知っていたの…?)」



ぞわりと全身の毛が逆立つ。



「(あの世界に稀モノがあるなんておかしい。それなのにどうして長谷君の家に稀モノがあったの…!?)」



その理由は本人にしか分からない。聞きたくても彼に会うことはできない。だからこそ余計に混乱して訳が分からなくなる。



「(じゃあ…え?長谷君の言う通り…本当に私が自殺に繋がるきっかけを彼女に与えてしまった…?私があの本を見つけなければ、彼女は死なずに済んだの…?)」



なんて残酷な真実なんだろう。きっと彼女は私の様子がおかしいことに気付いてたんだ。だから私が部屋を出た後、あの本を開いてしまって、自分が稀モノの犠牲者になった。



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