第16章 裏切りの夜-シンジツ-
「…ち、違う…拒絶なんて…」
図星を突かれた様に心臓がドクンッと嫌な音を立てる。
「私はアウラなんて…」
その瞬間、赤い本の存在が脳裏を過ぎった。
「っ………!」
激しい頭痛に顔を歪める。
「視ることを拒絶したのなら、私が視えるようにしてあげますよ」
「やめて…」
ベッドに突っ伏したまま、苦しみに堪える。
「ご友人の死は、さぞかし悲しかったでしょう」
「!?」
四木沼喬の言葉に、耳を疑った。
「今、なんて…?」
「貴女はご友人の死がきっかけで、元々視えていたアウラを拒絶してしまったのではないですか?」
「何でそのことを…。貴方は私の何を知っているの…?あの文章に書かれていた秘密って…どういうこと…?」
「"貴女の秘密を知っている"」
四木沼は笑みを浮かべ、私を見て言った。
「貴女が……───別の世界から来た人間だということを。」
私は四木沼喬の放った言葉に唖然とする。
「何、を…言っているのか…分かりません…」
「誤魔化しても無駄です。貴女は未来から来たのでしょう?空の瞳のお嬢さん。」
緊張と恐怖で冷や汗が止まらない。私は別の世界から来た人間だと悟られないように、ハッキリとした口調で四木沼喬に告げる。
「…私が別の世界から来た人間だという証拠はありますか?」
「ええ、勿論です。ただ知りたいのなら、私のモノになって下さい。そうすれば証明して差し上げますよ」
「(これは罠なの…?でも私しか知らない秘密をこの人は知っていた。絶対に知らないはずなのに。)」
「でもその前に…アウラを視えるようにしなくては」
四木沼喬が笑みを浮かべて、私の顔の近くでパチンッと指を鳴らした。
「あ、れ…?」
それが合図だったかのように、頭の中が真っ白になり、段々と色付いた情景が思い浮かぶ。
「やだ……っ!」
見覚えのある記憶に、私はその先を視ることを拒絶した。
「さぁ、お嬢さん。貴女自身で、アウラを視ることを拒絶してしまった記憶を…思い出すのです」
意識が薄れ始め、私の脳裏は、欠けたピースを求めて、思い出そうとする。
【あの日】の彼女の最期を───。
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