第15章 恋文-ヤクソク-
彼の言うことはもっともだった。あれ以来、音沙汰がないとはいえ、誘拐され掛かったのだから。
「…覚えています。ごめんなさい」
「なら、もっと自分の心配すれば」
「…してます、ちゃんと」
「…………っ」
「滉の言いたいことは分かる。私だって…忘れてるわけじゃないの。でも…困っている人を見捨てるなんてこと、私には出来ない」
「…そういうところが」
「そのせいで、滉だって私を見張るようなことになってしまっていて申し訳な…」
「別に命令されたわけじゃないし」
「………!」
「あの場にあんただっていただろ。俺が好きでやってるんだから謝らないでくれないか」
「…え、あの…っ」
「危なっかしくて放っておけないんだよ!」
「………!!」
「あ…っ、…いや…──危なっかしいのは事実だろ」
「そ、そう…ですね」
またいつの間にか鼓動が激しくなっていて、私は俯いた。
「…とにかく、注意しろよ?本当に。紫鶴さんにもああ言われたんだし」
「…はい」
「…はぁ、全く」
「…その、怒ってる?」
「別に怒ってはいないよ。ただ、あんたの性格に呆れてるだけ」
「うっ…ごめんなさい」
「……………」
「……………」
それきり、会話が途切れた。
「本当に、怒ってないよ」
「うん…有難う」
「ただ、その性格はどうにかした方がいいとは思うけどな」
「…直ぐには無理なので、少しずつ直します」
滉の表情には、本当に怒っている様子もなく、私はほっとする。
「…あのさ」
「は、はい!」
そのたった一言に私は身構えてしまう。
「…いつものところとは違うけど、今夜から新しいのが始まるんだ。行く?」
「!」
「一番遅い書店が閉まるのを見届けた頃が、丁度始まる時間だから」
「わあ、楽しみ!」
彼に誘われたことに嬉しくなって、思わず舞い上がってしまった。
「今度はどんな話の映画なのかな!」
「でも、あんたが気にいるかどうかは分からないけど」
「全然!映画はホラー系以外なら大抵は好きになる!とても楽しみだね!」
「……………」
「滉?」
「何でもない、行こう」
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