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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第14章 幾つもの囀り-フイウチ-



「…そうなんでしょうか…。今夜のこれは、自分がお世話になっている先輩の采配なんです。カラスの名前は全く出さず、もちろん集まった者にも箝口令(かんこうれい)を敷いて…慎重に慎重に動いたつもりだったのですが…」



「そう落ち込むな、燕野。今頃は店の何処かで本当にオークションが開かれているのかも知れないし」



「…有難うございます」



✤ ✤ ✤


アパートに戻り、それぞれ今日の報告をし合う。



「うーん…。そうなるとやはりその美沙宕って子も危険な気がするなぁ」



「やはりそうでしょうか…」



案の定、みんなも美沙宕さんが心配そうだった。



「滉の言うように、何処から洩れるか分からない。紫鶴に頼んで、こっそり温泉にでも連れて行かせるか」



「温泉…」



「露天風呂…」



私と翡翠の声が重なる。



「い、いえいえ!ただ…一度も行ったことがないので、ちょっと…いいなって…。ね、立花さん?」



「浴衣を着て、美味しいご飯を食べて、景色を眺めながらお風呂に浸かれたら最高だろうなって」



「立花は温泉が好きなのか」



「はい。こっちの温泉は行ったことがないので興味はあります」



「近所にはなかったのか?」



「え、えぇ…。行く機会もなかったですし、一度行ってみたいなって…」



ひやりと心臓が冷たくなった気がした。



「(不用意な発言は控えるように!気を抜いたらまたフラグ回収に失敗する…!)」



笑みを浮かべつつも、内心は焦りでひやひやしていた。



「じゃあ、カラスを潰したらみんなで行こうぜ!」



「はは、それは名案だな。その時には思う存分羽根を伸ばせるだろう。さてと、じゃあ私は早速、紫鶴に頼んでくるか。みんな今日もご苦労様」



お疲れ様でした、と隼人達が去って行く。



けれど私はその場に残り、このフクロウの探索部長である朱鷺宮さんに、どうしても聞いてみたいことがあった。



「どうした?何か私に相談事か?」



私の様子を察したらしい朱鷺宮さんが、足を止める。



「…はい」



私は先日の葦切さん、そして今日の書店主の言葉を伝えた。



「ははは、そんなこと言われたのか。
みんな悲観的だなぁ」



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