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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第14章 幾つもの囀り-フイウチ-



「…お、お気持ちは分かります!でも和綴じ本の総てが危ないわけではないですし、私達も探してますから!」



「一応そう聞いてますけど、うーん…正直に言うと、もうあるだけで怖いんですよ」



「………………」



「別に店を閉めるってわけじゃないですよ。それに和綴じ本だってもう殆ど出ないし、うちみたいな小さなところが取り扱い止めたって影響なんてありませんて」



「ですが……」



「並べておいたって怖がって手にしない人もいるくらいです。だからうちに何冊か残ってたのは知り合いの店に譲りました。ああ、もちろん前に検分していただいたものですよ」



「……………」



「いい機会だったんですよ。遅かれ早かれ、和綴じ本なんて消える。時代遅れです。これからうちは輸入書を主にしていこうと思ってるんですよ。新しい時代に向けてね、欧羅巴や亜米利加からどんどん本を仕入れるつもりです」



「…そうですか。それも…素敵ですね。和綴じ本が無くなって平和になるなら…それが良いのかも知れません」



✤ ✤ ✤


「(どんな本を扱うかまで口出しする権利はない。輸入書だって、もちろん大事。和綴じ本の取り扱いも少なくなってるし、時代遅れと言えばそうかも知れない。)」



本に怯えて暮らす世界か…



「(大変だな…この時代を生きる人達は。)」



思わず溜息をついた──その時。



「………?」



黒塗りの車がいきなり横付けされた。



「…陸軍?」



「え?」



微かな不安を覚えつつ、離れることも出来ずにいると、扉が開いて数名の軍人が出て来た。



「帝国図書情報資産管理局というのはお前達か」



「…………っ」



「…そうですが、何か?」



「稀モノとやらは見つかったのかね」



「!?」



「証拠があるなら、是非」



「しょ、証拠って…」



「あの、陸軍の方ですよね?
一体俺達に何の用でしょうか」



「帝国図書情報資産管理局などという組織が本当にこの国に必要なものかどうか…確かめに来たのだ」



彼は傲慢なことこの上ない眼差しで、私を眺めた。



「…せめて、名乗っていただけませんか?
俺は鴻上滉、彼女は立花です」



「…立花詩遠と申します」



私は小さく頭を下げる。



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