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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第14章 幾つもの囀り-フイウチ-



「尾鷲英樹だ」



「その尾鷲さんが、何故いきなり視察に?」



「君達は、現首相の鵜飼氏が軍縮を掲げ、我が陸軍の一部の設備閉鎖を提案しているのを知っているか」



「そんなことを聞いたことがある気もします」



「おかしいと思わないか?この国を守るために尽くしている私達がそうして軽んじられ、ペテン臭い本の保護集団がそうしてのうのうと活動しているなど」



「首相に言って下さい」



「あ、滉!」



「ああ、もちろん何度も提案しているとも。だが頑として聞き入れてはいただけない。だからこうして確かめに来たのだ。一体どれ程の華々しい活躍をしているのか」



「(この人…嫌な感じ。)」



「だが少し見ていたところ、ただ本屋を見て回っているだけじゃないか」



「書店を巡回して本を探すのと、取り扱いの指導が俺達の基本的な仕事ですから」



「非効率的だな!そんなものは見つけた本屋に届けさせればいいだろう!」



「…お言葉ですが。そういった案も出てはいます。ただ書店主が気付かない場合や、利益を得るために隠蔽している可能性もあります。それに和綴じ本は現在、個人出版物が主ですから、持ち込まれる書店を…」



「ああ、つまらん御託はもういい!!」



「…………!」



唇まで何かが出掛かったけれど、相手は軍人だ。ここで問題を起こして、おじい様に迷惑をかけることだけは避けたい。



私は拳を握り締め、ぐっと堪えた。



「とにかく、大層な名の割にはやはりお前達に何の価値もない、というのはよく分かった」



「な……!」



「立花、止めとけ」



滉に腕を突かれ、それでも私は彼を睨んだ。



「"立花"…まさかとは思ったが、何の役にも立たなさそうなこの小娘が、立花警視総監の孫とはな」



「!?」



言葉の悪さにこちらが衝撃を受けた。



「君からも警視総監に頼んではくれないかね?我が陸軍の一部の設備閉鎖を提案していると」



「何故私が貴方の頼みを聞かなければならないのでしょうか」



「!」



「ペテン臭い本の保護集団などと私達の仕事を侮辱しておいて、設備閉鎖の提案は図々しく頼む。貴方にどれだけの価値があるかは知りませんがそれが人に物を頼む態度ですか?」



「貴様…!!」



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