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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第13章 月に憧れて-ユメ-



「…うん。それから剣道を習い始めたの。もうあんな嫌な思いはしたくないから」



「……………」



「早く慣れなくちゃって思うのにどうしても体が拒否しちゃって。こんなんじゃダメだって分かってはいるんだけどね…」



「立花の気持ちも分かるけどさ、そういうのって焦っても仕方ないんじゃないか。無理して慣れようとすると余計に恐怖心が高まるかも知れないし…立花のペースで少しずつ慣れていけばいいと…思う」



まさか彼の口からそんな言葉が聞けるとは思わず、驚いた顔を浮かべれば、滉が気まずそうに視線を横に逸らす。



「うん、有難う」



「礼を言われるようなこと言ってないよ」



それでも私は嬉しくて微笑んだ。



「実は言うとね、正直に白状しちゃうと…夜に出かけることを父が心配して許さなかったの」



「…そうなんだ」



「若い女の子が夜に独りで外に出るなんて危機感が無い!誰かに襲われたらどうする!そんなはしたない子に育てた覚えはありません!…て怒られたことがあるよ」



「…そうなんだ」



「でも今はその言葉が痛いほど分かるというか…もっと警戒心を持って夜道を…」



「じゃあ、今のあんたは相当に危機感がない、はしたない女ってことだ」



「………!?」



「家族でもない男と隣同士で映画を観て、その後にこんなカフェに来て、やっぱり……────嫌なんじゃないの?」



「でもそれは、私が好きでしていることだから」



「…ならいいけど」



「確かに私も驚いてるよ。あれだけ怒られたのに…こんな時間に男性とカフェにいるなんて。父が生きてたら何て言うかな」



遅い時間に帰った私を叱りつける、心配性な父を思い浮かべた。



「此処に来て驚きの連続で…不安と戸惑いの方が大きくて…どうしていいのか分からなかった」



「……………」



「誰かの支えがないと独りじゃ生きていけなくて…頑張ろうって思っても心が挫けそうになる。でも…それでも私は前に進むって決めた。押し売りのことも覚えておく、有難う」



「……───あんた」



滉が何か言い掛けた───その時だった。



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