第13章 月に憧れて-ユメ-
「女学校ってさ、みんなあんたみたいなの?」
「え……」
蔑むような気配ではなかったけれど、その声は何処となく暗い。
「わ、私みたいって…。み、みんなではないと思う。あれだけの人数がいるわけだし、一括りには…」
「男の隣で映画を観るの初めてだって言ってたよな。もしかして…巡回の時に、俺達と少し離れて歩いてたのもそんな事情?」
「あれは!」
「やっぱりそうなんだ」
確かにこの世界では女学校に通っていた。けれど元の世界では共学校だったし、普通に男子と喋ったり、隣に座ることだってあった。
でも…苦手になってしまった。"あの事件"が私の…男の人に対する接し方を変えたのだ。今まで普通に接していたのに…"あれ以来"、男性に触れられるのが、怖くなった。
紫鶴さんが私の肩に触れた時、ぞっとする程の悍ましい感触が襲い、私の脳裏にあの日の事件が蘇った。そのせいで紫鶴さんをすごく心配させてしまった。
そろそろ慣れなきゃと思うのに、触れられるとどうしても体が拒否反応を起こし、震えてしまう。
でも滉に抱き締められた時は、触れられても体は強張らなかったし、触れられて嫌だとも思わなかった。むしろ…安心したのだ。
「…あのね、これを言うと面倒臭いって思われるかも知れないけど…」
「?」
「家族以外の男性に触れられるのが苦手で…少し緊張してしまうの」
「男が苦手なのか?」
「うん…。あ、でも…!近くで話したりするのは平気だよ。ただ…完全に慣れるのにまだ時間が必要で…」
「…じゃあ、あの時も怖かった?」
「え?」
「ほら、後ろから抱き締めた時…」
「う、ううん!あの時は大丈夫!不思議とね…滉に触れられるのは嫌じゃなかったの」
「え……」
「め…面倒臭いって…思ったでしょう?」
「別に面倒臭いとは思わないよ。というか、立花が男が苦手って知らなかったから色々と失礼なこと言った…ような気がする。ごめん。」
「私が隠してたんだから知らなくて当然だよ。滉は悪くない。」
「男が苦手になったのって…前に話してた学生の頃に嫌な経験をしたのが原因?」
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