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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第13章 月に憧れて-ユメ-



「…観た。以前に」


「そうだったの…。もしかして付き合わせ…」



「いや、違う」



妙にきっぱりと彼は言い切り、そのまま会話を阻むようにスクリーンに顔を向ける。



「(…二度目ということだよね?)」



不思議に思っているうちに映画が始まり、私はすぐにその世界に引き込まれてしまった。



看板にあった砲弾は、何と『宇宙船』だった。学者達はそれに乗り込み、月に向かうのだ。そしてその月には────。



✤ ✤ ✤


「私も月に行ってみたい!」



「…そう言い出す気がしてた」



映画は、20分もないような短いものだった。



辿り着いた月には王国があり、一度は捕まったものの逃げ出して無事に地球に戻る。



けれどその月の世界は、私の想像とは全く違っていた。



「三日月や北斗七星の女神様に会ってみたい、そして月に降る雪を見るの」



「凍え死ぬよ」



「ありったけ着込んで行けば大丈夫!そしてあんなふうに月の世界を歩くの。でも月の王様には捕まらないようにする」



「どうかな、あんたなんて真っ先に捕まりそうだけど」



「そんな!でもとっても面白かった!月に人間が行けるなんてまるでお伽話みたい。きっと月から見た地球はとても青いと思うの」



「スクリーンに釘付けだったよな」



「だって感動したの。月には何があるんだろうって想像した。まさか王国があったなんて!月の王女様っているのかな?」



「王様がいるんだから、王女もいるんじゃないのか」



「わぁ…会いたい!」



月の王女様はどんな姿だろうと想像し、ワクワクとした顔で胸を踊らせる。



「いつか月に行けたらいいなぁ」



「行けるんじゃないか」



「本当?じゃあ、その時は一緒に行けたらいいね」



「………え」



「…あ!ご、ごめんなさい、勝手なことを…」



「……いや」



「私、はしゃぎ過ぎだね。でもあの映画は本当に素敵だった。月に行けた人は最高だね。だって夢のような世界が待っているんだもの」



「……………」



彼は何か言いたげだった。



「…滉?」



けれど、少し待ってみて出て来たのは映画とは全く関係のない言葉だった。



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