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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第13章 月に憧れて-ユメ-



「…私、何かおかしいこと言った?」



「何も。ただやっぱり箱入りだなって思っただ……あ」



「………………」



「……───ごめん」



私が何か言う前に、彼はばつが悪そうに頭を下げた。



「みんなは…買わないものなの?」



「というか、それって基本的には嘘だから。脅迫っていうか、怖がらせて売りつけるわけ。たまに包丁なんかも突きつけたりして」



「…そういうことなんだね」



「警戒心を持つことは良いと思うよ。でも金を巻き上げる為に同情を誘ってあんたみたいなのを騙す奴もいるってこと」



「…私、案外チョロい?」



「チョロいって言うより騙されやすい。下手な演技に引っかかって痛い目見るタイプ」



「…何も言い返せない」



「一つ勉強になったろ」



私は小さな溜息混じりに頷いた。



「ほら、つまんないことで落ち込んでないで次の店に行くぞ」



そうして知る限りの書店が総て閉店してしまった頃、私達はまたあの映画館の前にいた。



「…席、どうする?結構まだ空いてるみたいだから、別々でも大丈夫だけど」



「あ……」



そんなふうに改まって問われると…


また気になってしまうのに



「滉さえ問題があければ、私は隣がいいかな」



私は、気恥ずかしさを覚えながらも笑みを浮かべて答えた。



「…分かった」




くるりと背を向け、彼は切符売りの女性に話し掛ける。その背中を見ているうちに、昨夜のことがまた頭に浮かぶ。



どんな事情であったにせよ、男の人にあんなに近付いたのは久しぶりだ。



抱き締められたことは、初めてだったが。



『だから……───安心しろ』



あの時の声を、私はとても簡単に思い出せる。そして、分からなくなるのだ。



彼に嫌われているのか、そうでないのか。



✤ ✤ ✤


隣同士に座るのは、やはり微妙な緊張があった。先日と違い、空席がある分余計かも知れない。



「短い映画だからな。他にも何本かまとめてやるみたいだ」



「…もしかして、滉ってもう観たの?」



「え?あ……」



そこで何故か滉は気まずそうに顔を背ける。



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