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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第13章 月に憧れて-ユメ-



「やっぱり人気ですね、汀先生は」



「もちろんだよ!ちなみにあんたはどんな本を読むんだい?」



「現実では決して起こりえない現象が載っている本、とかですかね…」



「?それはどういう…?」



「例えば…不思議な空間が出現して、それを潜ると別世界に迷い込んだ、とか…何かがキッカケで過去に飛ばされた…とか。そんな話の本を探しています」



「……………」



「(少し攻め過ぎたかな…)」



「あんた変わった内容の本が好きなんだねぇ。そういうのは置いてないけど…図書館にならあるんじゃないのかい?」



「図書館ですか…」



「それより汀紫鶴先生の本!買っていくのかい?」



「…では、それを一冊」



✤ ✤ ✤


「…稀モノを探しに行って、どうして紫鶴さんの本を持って出て来るんだよ。まさか、紫鶴さんの本が稀モノの可能性があるとか言わないでくれよ?」



「違う違う。これは印刷の洋装本だし…ただ、薦められたものだから」



「…あんた、うちのアパートで良かったな」



「どうして?」



「うちは管理人さんが押し売り出入り禁止にしてるけどさ、うっかり一軒家なんかで独り暮らし始めたら、有り金全部突っ込んでゴム紐とか束子とか縫い針買いそうな性格だよな」



「…押し売りって?」



「そこからか。悪い、説明するのも面倒だから忘れてくれ」



「そんな言い方されたら気になります、教えて下さい」



「一生会わないだろうから覚えても意味ないよ」



「知ることは大切です」



「…普通の物売りじゃなくてさ、人相の良くないのが玄関に陣取って『俺は昨日、刑務所を出たばかりなんだ、金が必要だから買ってくれ』って言うわけ」



「まず刑務所を出たばかりの人相の良くない人って時点で警戒はするかな」



「へぇ…そこはちゃんと見極めるんだな。じゃあさ、そいつが切羽詰まった顔で『誰にも買ってもらえないんだ、俺は明日生きられないかも知れない』って涙ぐみながら言われたら?」



「…そういう事情なら買うかも。その人が本当に生きられなくなったら困るし」



「そうだな、はいはい」



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