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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第12章 謎の誘拐犯-キョウフ-



その時の道が、今歩いている情景に似ている。街頭は灯されているものの、夜遅い時間ということで、人通りのない道だった。



そこの通り道には、白い壁で隔たれている建設中のビルがあって、入り口から覗けば、中は真っ暗で何も見えない。



夜は人も通らず、静けさが戻ったように何の音もしなかったから不気味だった。



でもその道を通らないと家に帰れなくて。近道はあるのだが、信号機が多く、赤に切り替わるのが早い。だから多少遠回りしてでもその道を使っていた。



「(そう言えばあの頃…)」



『最近あの辺りで不審な男が彷徨いているという目撃情報が多発している』



『この間も夜にあの辺の道を歩いていた女子大生がビルに引きずり込まれて性的暴行の被害にあったそうだ』



『お前も夜はあの辺りを一人で通るな。多少の遠回りをしてでも避けろ。何かあってからじゃ取り返しがつかなくなる』



「……………」



彼の言葉が私を咎めるように今も頭の中で訴え掛けてくる。何度も注意された。何度も通るなとキツく言われた。分かっていた。夜道が危ないことくらい、分かっていたはずなのに…。



「…大丈夫。もう…終わったんだから…」



首に巻かれたストールをギュッと握り締めて、辛そうに眉を顰め、瞼を閉じる。



「何も…何もなかった…。そうでしょう…?」



まるで自分に言い聞かせるように言葉を吐く。



「(この道は大丈夫。何も起こらない…。)」



微かに震える唇から吐息が洩れる。



「…早く帰ろう」



不安と恐怖を抱えて、私が歩みを速めた時だった。



「!?」



走ってきた車がいきなり私の横で停まる。



本能的に身の危険を感じ、逃げようとした矢先、車のドアが開いて私に向かって手が伸ばされた。



「いや……────っ!!」



見知らぬ男達が私を車の中に引きずり込もうとする。



「いや!!離して!!」



かろうじて足に力を入れ何とか堪えていたが、ひとりの男の手がストールを掴んで更に車の中に引きずり込もうとした。



「…………っ!!」



ぞくりと背筋が凍った感覚が走る。私は慌ててストールを掴み、解けないように逆の方向に引っ張る。



「や、だ……っ!!」



泣きそうになるのを我慢して男達の手から逃れようとした。



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