第12章 謎の誘拐犯-ｷｮｳﾌ-

「そんなに遅くまででなくてもいいの、少し遅くまでやってるお店を、さっと覗くくらいで…」



「……………」



「(やっぱり駄目かな…)」



滉に切り出してみたのは、彼もまた昼間、葦切さんの話を聞いた仲間だからだ。



出来れば同じ思いでいて欲しい───そんな私の我が儘だ。



「…はぁ。分かったよ、付き合うよ」



「ほ、本当にいいの？もし迷惑だったり用事があるなら、私一人でも…」



「迷惑でもないし、別に用事もない。俺も気になってはいるから一緒に行くよ」



「！」



「それにこんな夜遅くにあんた独りを歩かせて何かあったら、朱鷺宮さん達が心配するだろうから」



「有り難う…」



彼なりの優しさなのかも知れない。ただ今は、賛成してくれた滉に嬉しくて、私は微笑みを浮かべた。



✤　✤　✤



「あれっ!?こんな時間まで見回り？」



「…ああ、いえ。仕事はもう終わりました。個人的に本を探したくて」



「おやそう？いやぁてっきりうちに何かお咎めでもあったかと思って焦っちゃったよ」



「(あ……)」



「仕事抜きなら大歓迎だ。でももうすぐ閉めるから、買うなら早く選んどくれ」



✤　✤　✤


「だから最初に言ったろ、基本的に俺達は歓迎されないんだって」



「…はい」



一昨日は一人だったせいか、そう訝しがられずに済んだのだ。



フクロウの制服を着た二人が夜遅く店に入ってくるとそれだけで警戒してしまうらしく、どの店でも反応は似たようなものだった。



「気持ちは…分かるけどさ」



「…うん。有難う」



「……あ」



バスを降りて少し歩いたところで、不意に滉が立ち止まった。



「思い出した、風呂用の石鹸切れてたんだ。ちょっと買ってくるから先に戻ってて」



「うん、行ってらっしゃい」



「……………」



「どうかした？」



「いや、夜道だし…一人で大丈夫かなって」



「大丈夫だよ。街頭も明るいし、何かあっても大声出して叫ぶから。だから心配しないで？」



「…じゃあ、気をつけて」



「うん」



そうして夜道を歩きながら、私はふと思い出してしまう。



「(学生の頃、部活で遅くなって人気のない夜道を一人で歩いて帰った事があった。)」



.