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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第12章 謎の誘拐犯-キョウフ-



「…大変そうですね」



「いやまぁ、それでもうち幸せな方ですよ。デスクは心配性なだけで、カラスの手先ってわけじゃありません。ただ他の新聞社なんかは…」



彼はそこで言い濁し、またカップを口に近付ける。



「鵜飼首相も大変だと思いますよ。省庁のくそじじ…いや、偉い方々は、まだまだ稀モノなんて信じない、詐欺だペテンだって奴も多いですし」



「(私も最初は信じなかったからな…)」



「逆に、そんな危険なものならもっと厳しく取り締まって自筆の本なんて禁止すべきだって声もあるようですが…『書いちゃいけない』ってのは駄目ですよ、やっぱり。…何か伝えたくて書くんですから。それは俺達だって同じです」



「…先輩」



「それにまぁ実際、禁止令なんて出したところで無駄でしょう。でかい出版社なんかで検閲、発禁処分ってんならいざ知らず、個人の執筆を完全に把握するのは不可能だ」



「確かに…」



「ただでさえ…印刷の本に押されて、もう自筆の和綴じ本なんて消えていくだけだ」



「……………」



「せっかくの方法ですよ?世に伝えるための。出来れば見逃してやって欲しいなぁ…なんて思うのは甘いですかね?」



私はまたダージリンを飲んだ。何か言いたいことがある気がするのに、なかなか言葉にならない。



「記者さんらしい考えですね」



「そうですか?でも鴻上さん達だって似たようなものでは?こんなこと考えません?」



「ああ…いえ、俺は自分で何かを書くわけではないので。そんな考え方もあるんだなと勉強になりました。ところで話をカラスに戻しますが、葦切さんは独りで追ってるんですか?それとも会社の方で他にも誰か?」



「俺独りですよ。誰も手伝ってくれないんでね」



葦切さんの言葉の一つ一つは、私の中に深く刻み込まれた。



そして午後7時。
今日も稀モノは見つからない。



「(…どうしようかな。)」



一昨日は用事があると言って別れたけど…



「あの、滉。一つ…提案があるのだけれど」



「何」



「も、もう少しだけ…探さない?」



「最初に注意したと思うけど」



「分かってます、覚えてます!ただ…例のカラスの稀モノがどうにも気になって」



「………………」



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