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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第10章 思い掛けない出来事-スガオ-



「(また喧嘩で終わってしまった…)」



自分の態度にも反省していると、今度は滉が歩いて来た。



「あ、おはよう、滉」



「……………」



滉は私を一瞥し、そのまま何も言わないばかりか、明らかに足を速めて玄関から出て行ってしまう。



「(良いことはないのかも…)」



私の勘は余りあてにならないなと───思った。



✤ ✤ ✤


その日は、翡翠と巡回した後、昼食は久しぶりにフラマンローズでとることにした。



料理が運ばれてくるのを待ちながら、私はふと昨夜のことを思い出す。



「(華族、か…)」



───華族。



彼はあんな乱暴に一纏めにしたけれど、本当は家によって大きな差はあるのを、おじい様から聞かされたことがある。



公家に由来する華族は公家華族。
藩主に由来する華族は武家華族。



国家への勲功により、新しく華族に加えられたものを勲功華族。



そしてその華族の中でも順位がある。最も地位が高いのが公爵で、候爵、伯爵、子爵、男爵と続く。



立花家は公爵家で、華族の中としては最も高い位に値する。けれどやはりその特殊な立場上、嫉妬めいた言葉を向けられることはあった。



だから、大なり小なり『華族』というものを嫌悪する感情は理解出来る。



「(そんなに大事なのかな、爵位って…)」



少し考えた後、私は思い切って尋ねてみる。



「ねぇ翡翠、突然で申し訳ないんだけど、滉のことで…少しいい?」



「何ですか?」



「あの…こういうことを聞くのって気が引けるし、そもそも自意識過剰や思い過ごしかなとも思うの」



「やけに前置きしますね」



「…私、滉に嫌われてない?」



「ないと思いますが」



あっさりと即答され、私は身を乗り出したまま逆に困ってしまった。



「彼のあの素っ気なさは僕達に対しても全く同じです。気にする必要はないです」



「で、でも…私が気付かないうちに滉を傷つけてしまったとしたら…」



「それもないと思います」



また即答された。



華族が苦手───そう口にした滉。しかも今朝は、はっきりと無視されてしまった。



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