第10章 思い掛けない出来事-スガオ-
「今日も良い天気だなぁ…」
玄関前を掃除しながら、私は空を見上げた。このところ、ずっと晴天が続いている。
「何だか良いことがありそうな空」
私は嬉しくなって笑みを浮かべた。
そして掃除と朝食を済ませ、始業少し前に玄関に向かって歩いていると、向こうから鵜飼さんがやってきた。
「(…そう言えば、少し前に不機嫌にさせちゃったんだよね。)」
鵜飼さんはフクロウの一員でもないし、ホールなどにも滅多に顔を出さないため、会うのは少し久しぶりだ。
「(よし……!)」
仲良くなろう作戦、開始だ!
「おはようございます、鵜飼さん」
「……………」
案の定、返事はない。
「今日はとても天気が良いですね。こういう日は絶好の紅茶日和です。鵜飼さんは紅茶お好きですか?」
「…下等生物が気安く話しかけるな」
「では、対応な立場でお話しましょう」
「何?」
「この前はすみませんでした。鵜飼さんにも非はありましたが、流石に私の方が言い過ぎました。これを機に仲直りをして、親睦を深めませんか?」
「あれは完全に貴様だけに非があった。僕は一切悪くない。故に貴様と馴れ合う気も親睦を深める気もない」
相変わらずツンケンしている鵜飼さんの罵倒にどうにか堪え、笑みを絶やさずに続けた。
「それと先日のパーティーの招待状…」
「ああ、お前が言ったらしいな」
「そうなんです、鵜飼さんのお陰で…」
「朱鷺宮さんが困っていたようだったからあんなことを許可したが…向こうで妙な真似をしなかっただろうな?」
「するわけないじゃないですか」
「ふん、どうだかな」
「それにしても鵜飼さん、自分に届いた招待状なのに出席しないなんて不真面目少年だったんですね」
「何だと?」
「首相のご子息なら、愛想笑いの一つでも見せて、嫌でもパーティーに参加するべきではないのですか?」
「…何故この僕が面白くもないのに馬鹿みたいに愛想笑いを浮かべて奴らのご機嫌取りをしなくちゃならない」
「そういうところですよ、鵜飼さん」
「…やはり貴様は不愉快極まりない」
冷たい眼差しを私に向け、彼は去って行く。
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