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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第9章 闇の嘲笑-ナハティガル-



元の世界で過ごしてきた日常、さりげない仕草、やってきた事の全てが違う。だからこそ、この世界で生きて行く為に必要なものを頭に必死に叩き込んだ。



立花家の名に恥じないように、おじい様の顔に泥を塗らないように…。



「…滉の言いたいことは…分かる。でも…こんなことを言うと、甘いって笑うと思うけど、少なくとも私は自分が華族だからって誰かを下に見るつもりはないから」



「……………」



「それだけは…言っておきます」



「……──分かった。覚えておく」



✤ ✤ ✤


「そうか、めぼしい手掛かりはなかったか」



「お役に立てず済みません」



「力不足でした…」



「何言ってる、二人が怪我もせず無事に戻って来てくれただけで十分だ。ただこれで中の様子は大分把握出来るだろう」



あの後少し廊下を歩いてみたものの、客らしい男女と擦れ違っただけで、おかしなところは何も見つけられなかった。



「やっぱり貴賓室の辺り、怪しいと思うんですよね。ただ流石に中までは調べ切れませんでした」



「見取り図だけだと、怪しい部屋は何処にもないからな。…まぁ、うちがこんなだし、あそこにだって秘密の地下壕があってもおかしくない」



「…確かに」



「立花もご苦労だったな。今日は良く働いてくれた。もう夜も遅いし、休んでくれて構わない」



「はい…有難うございます」



頭を下げて作戦室を出た。



部屋に戻り、着替えても──私の気持ちの重さは拭い切れなかった。



「…なんの役にも立たなかった」



裏庭へとやって来た私は、一冊の本を抱え、温室に向かって歩く。



「(パーティーなんて良いものじゃないな…)」



『初めてお目に掛かるお嬢さんですね。私はオーナーの四木沼喬です』



「(あの人を見てると…嫌な記憶を思い出す。せっかく…忘れようとしてるのに…)」



吐き気がする程の気持ち悪さが襲う。顔をしかめて、眉を顰めた。



温室に近付いた、その時───。



「……あ」



「……………」



滉は、明らかに困惑した顔で私を見ている。



「(また星を見てたのかな。)」



以前に素っ気なくされたことを思い出し、言葉に戸惑う。



「あのさ、さっきは変なこと聞いてごめん」



「…………!!」



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