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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第9章 闇の嘲笑-ナハティガル-



忘れてしまおうと思っていたものを、またいきなり蒸し返される。しかも、照れたり動揺している様子が一切ないのがまた腹立たしい。



「(…考えてみたら、何故あそこであんなことを言われたの?)」



ぐるぐる回る思考を巡らせた結果、これはもう直接本人に聞こうと思った。



「…き、聞いてもいい?あの時…何故そう思ったの?私、おかしなこと言った?」



「…別に。何となく」



「何となく!?何となくであんなこと言うの!?」



「うーん…じゃあ、こう言えばいいのか?あれは褒めたつもりだったんだけど」



「褒め……」



彼は相変わらずの無表情さで、揶揄っているふうではない。これが本気なのだとしたら、正直──彼の褒め言葉は理解し難い。



「あんた、あの貴賓室が酒飲んだりするだけの場所だって本気で思ってる?」



「…貴賓室ってそういう所じゃないの?」



「まぁ、そう思うならその方が幸せだからいいよ」



「え、待って!そんな言い方されると逆に気になるよ!?」



「じゃあ、言うけど。あんな店の奥にある部屋だぜ?しかも似たような扉があんなに沢山。どう考えたって、酒も回って盛り上がった男が引っ掛けた女を連れ込む部屋に決まってるだろ」



「…………!!??」



「まぁもちろん、中には密談とかしてる奴もいると思うけどさ。どっちにしたってまともな目的の部屋じゃないよ」



「で、でも…本当に密談してるだけかも知れないし…そんな…いかがわしい事をする部屋だとは…思えないというか…」



「……………」



「(うっ…滉の顔が険しい…)」



「だから箱入りって言ったんだよ。全然そんなこと考えもつかないって顔だったから」



「そ、それは…」



「まさか…その意味さえ分からないとか言う?」



「わ、分かります!そこまで箱入りじゃありません…!」



「そりゃ良かった。じゃあ俺は部屋に戻る、おやすみ」



「あっ!滉…」



滉はいつもの調子で素っ気なく言い、背を向けてそのまま足早に歩いて行ってしまう。



「…私だって…そのくらい…分かる…」



きっと、彼に子供だと思われたことは間違いない



「…これじゃあ、世間知らずって言われても仕方ないか…」



悔しくて持っている本を胸に抱きしめた。



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