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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第9章 闇の嘲笑-ナハティガル-



余りのことに私の顔が真っ赤に染まり、わなわなと体が震え上がる。



「ごめん」



引っ叩かれると思ったのか、彼は小さく頭を下げた。



「な、何を…何を、突然…っ!!」



「悪かった、いやからかったとかじゃなくてさ」



「じゃあ、何だって言うの!?」



「やっぱり、箱入りの華族令嬢なんだなぁって。それと、もう少し静かにしろよ」



「先に聞いてきたの、滉なのに…」



その一言で、さっと私の中の羞恥心は収まり、代わりに悔しさのようなものが頭をもたげる。



『そのへんで勘弁してやってくれないか。お屋敷育ちの華族令嬢で世間知らずなんだ』



「…理不尽」



「……………」



「あんな質問を軽々しく女性に聞くなんて…最低。私じゃなければ引っ叩かれてたよ…。第一…そ、そんなこと仕事に全く関係ないでしょう…?」



「そうだな」



「…滉は、以前にもそんな言い方をしたけど…もしかして華族が嫌いなの?」



「……───ああ」



「………!」



「華族って言うか、金持ちって言うか…まぁ爵位とか難しいことは良く分からないけど、とにかくああいうのはみんな嫌いで」



「ああいうのって…そんな一括りにされても…」



「確かにそうだな。その中では一応、俺なりにあんたは敬意を払ってるつもりなんだ」



「(…こ、これで?)」



───とは流石に言えなかった。



「あんた個人には一切恨みはないし、今も言ったように敬意を持ってるよ。ただ…偉ぶってる奴が嫌いなんだよ。人を人とも思わないような態度取る奴もいるじゃん」



「……………」



彼の言葉に、私は完全に落ち込んでしまった。女学校には、様々な生徒がいた。華族と一口に言っても、その成り立ちではっきりとした序列がある。



また、資産や皇族との繋がり、父親の地位──『自分』とは全く関係のないところで順位づけられ、最下層の者は無邪気に貶められる。



元の世界での私は、ごく平凡な日常を大好きな家族と共に過ごしてきた。華族でも皇族でもない、普通の人間として。



この時代に来て、華族である立花家に引き取られて、それはもう一瞬で世界が変わった。警察のトップの地位に就いているおじい様。その孫というだけで特別扱いされる私。



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