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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第9章 闇の嘲笑-ナハティガル-



「あんな無愛想な奴と?偵察くらいなら、言ってくれれば僕が付き合ったのに」



「出来れば代わって欲しいですよ、本当に」



「滉……!」



「立花には悪いけど、俺ああいう場所大嫌いで」



「そう言うなよ。黙って立っていれば色男に見えるよ。口を開くと社交辞令が足りないけど」



「褒められても全く嬉しくないですね」



そう言って滉は、心の底から窮屈そうにネクタイをほんの少し緩めた。



「……………」



見慣れている制服姿とは違い、別の男性のようで言葉が出てこない。本当に私は彼の隣を歩くに相応しい人間なんだろうか…。



「じゃあ、そろそろ行くか」



「え?それだけ?」



「…それだけって、何がです」



「彼女のせっかくのドレス姿を褒めないの?」



「…褒める?」



「そうだよ。綺麗とか艶やかとか、このまま奪い去りたいとか、いっそ脱がせたいとかそういう」



「……………」



「っ、紫鶴さん!!いい加減にして下さい!!本当に懲りない人ですね!!ほら!滉が困ってるじゃないですか!!」



「あ、いつもの君に戻った。うんうん、やっぱり君はそうじゃなきゃ面白くないね。けど…顔を赤くしながら言われても、逆に可愛いだけだよ」



「っ〜〜〜〜!!」



私は顔を赤く染めたまま、悔しげな表情で紫鶴さんを睨んだ。



「……──まぁ、似合うんじゃないですか」



絶対にそうは思っていないだろう。声のトーンと言葉が合っていない。むしろ面倒臭そうな顔だ。



「(別に何かを期待してたわけじゃないけど…)」



素っ気なく告げた滉に私は少し悲しくなった。



✤ ✤ ✤


「(まぁ…彼の性格は理解ってるつもりだったけど…やっぱり切ないかな…)」



ギンザに向かう車の中には翡翠達もいたけれど、やはりみんな緊張しているのか、会話はない。



「(忘れよう。…私が気にする権利なんてないんだから。)」



私は無理やり頭の中から追い払った。



✤ ✤ ✤


「ここが…ナハティガル…?」



車から降りた私は、思わず感嘆を洩らしてしまった。あの図書館よりも更に大きな建物だった。



御影石を積み上げた堅牢な壁はまだ真新しい。特に目を引くのは、窓代わりに嵌め込まれた美しいステンドグラスだ。



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