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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第8章 不快な笑い声-カラス-(√)



「明日の晩、実はナハティガルで仮面舞踏会があるんだ」



「!?」



「昌吾君にこの招待状が届いていたんだが、彼は行く気はないらしい。…つまり」



朱鷺宮さんが私達をゆっくり見渡す。



「滉、立花と一緒に行ってくれるか」



「え!私ですか!?」



「……え」



明らかに気乗りしない態度に、私だけでなく、みんなの表情も微妙なものになる。



「あ、いや…俺、人が多いところって苦手で。舞踏会なんて柄じゃないし、そもそも踊れないですし」



「わ、私も踊れないです!
むしろ踏みます、足を!」



舞踏会って何!?



パーティーなんて行ったことないよ!!



それに露出の多い服は…



「そう言われると尚更行かせたくなってくるな。別に踊れる必要はない、要するに偵察だし」



「それはまぁ、そうでしょうが…」



「滉ももう少し社交的になれ」



「それは無理です。人付き合いって面倒だし」



「(…言い切った。)」



「じゃあ、滉と立花で」



「え、もう決まっちゃったんですか!?」



「決まっちゃったんだ」



艶やかな紅が塗られた口許を緩めながら、朱鷺宮さんは言った。



「えー!俺も行きたいでーす」



「隼人が駄目なんじゃなくて、二人に社会経験を積ませて少し場慣れさせたいんだ、それだけ」



「(私じゃなくてツグミちゃんの方が…)」



"本物"の華族令嬢のツグミちゃんが抜擢だと思う。この世界に来るまでごく平凡な日常を送ってきた私にとって舞踏会で踊るというのは超難関。第一に、踊れないのだ…。



「二人とも、上司命令は聞けるだろう?」



朱鷺宮さんが有無を言わせぬ表情で
ニコリと笑った───。



✤ ✤ ✤


「…いきなりの、急展開」



私は温室の寝椅子の上で、天井を見上げていた。



「…鴉の、羽根」



この仕事に就いた時に、覚悟はしたはずだった。昨日まででも遊びでやっていたつもりはない。ただ──昼間のあの不気味な笑い声がまだ耳の底にこびりついていた。



「一番…嫌な笑い声…」



あの笑い声が消えない、消えてくれない。



「…誰も聞いてないし、歌っちゃえ」



私はどうにかしてあの声を追い出したくて、最近ハマっている歌手の曲を口ずさみ始める。



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