第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
「……──有難うございます。やっぱり貴女は優しい人だ。じゃあ、おやすみなさい」
彼は小さく手を振り、出口に歩いて行った。
夜空を見上げると、星が輝きを放っている。
「違うよ…翡翠。私は…綺麗なんかじゃない。もう…穢れてしまったの。だから…キレイなんかじゃ、ないんだよ…」
うわ言のように呟き、悲しい瞳を揺らした。
✤ ✤ ✤
「お、風呂帰りか」
部屋に帰る途中、作戦室の方から朱鷺宮さんが歩いてきた。
「はい、お先に使わせて頂きました。それよりも朱鷺宮さん…今までお仕事だったのでしょうか?私に何か手伝えることはありますか?」
「はは、その気持ちだけで充分過ぎるくらいだ。まぁ仕事だったのはある意味本当だが、お偉いさんと会食でな」
「…そうでしたか」
「立場上、こういう面倒もたまにね。それよりそっちはどう?手帳ちゃんと受け取ってきた?」
「はい」
「そうか。…実は私からも一つプレゼントがあるんだ。一緒に向こうに来てくれるか」
朱鷺宮さんと一緒に作戦室に入る。
「…さて、と。お嬢さんが来て、一週間だ。見た限りではそれなりに上手くやれているようだけど…。どうだ?頑張っていけそうか?」
私は稀モノも見えないし
彼らの役に立てるのか正直不安だ
でも…逃げるわけにはいかない
頑張ると決めたのは
私自身なのだから───。
「朱鷺宮さん、私、言いましたよね。自分の足でちゃんと前に向かって歩いて行きたい、と。何も知らないままは嫌だと。ですから…」
私は覚悟を決めて、頭を下げた。
「精一杯、頑張ります」
「いい返事だな。これなら大丈夫そうだ。稀モノが見つからないとは言え、いつまた事件が起きるかは分からない。気を引き締めて引き続き頑張ってくれ」
「はい!」
「よし、じゃあこれを渡そう」
「(そう言えば、プレゼントって…)」
「はい、お嬢さんに愛のプレゼント」
「………!」
机の上に置かれたのは、細身の──護身用と思われるナイフだった。
「立花、剣術の扱いは?」
「学生の頃に剣道を習っていて竹刀は扱えますが…こちらは初めてです」
「ちなみに薙刀の経験は?」
「ありません」
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