第1章 空の瞳の少女-トリップ-
「さて…私も部屋に…」
使用人が頭を下げ、私も先生が待つ部屋に向かおうとした時、呼び鈴が鳴った。
「今日は来客者の予定はない筈ですが…」
「私が出るから貴女は紅茶の支度を。」
「ですが怪しい者ならお嬢様の身に危険が…!」
「そこは心配しなくても大丈夫。一応、護身術をおじい様から習ってるし、一人なら何とか撃退できる」
「…もし危なくなったら大声で叫んで下さい。ここは立花家のお屋敷です。すぐに全ての使用人を召喚させ、お嬢様を危険に晒す悪者を撃退致しますわ!」
「(うちの使用人達は強いからなぁ。)」
使用人を見送り、玄関の扉を開ける。
「初めまして」
一人の女性が穏やかな微笑みを湛え、立っていた。
「どちら様でしょうか…?」
「立花詩遠さんですね?」
「そうですけど貴女は?」
「私は帝国図書情報資産管理局探索部長の朱鷺宮栞と言います」
綺麗な赤い髪と艶やかな紅に彩られた唇。
女性が憧れるようなプロポーションだ。
「…私に何か?」
「少しお話をお伺いすることは出来ませんか?」
「申し訳ありません。これからレッスンの時間なのでまた日を改めて…」
「ほんの少しで構いません。どうか時間を作って頂けないでしょうか?」
「…わかりました」
「有難うございます」
朱鷺宮さんを自宅に招き入れる。私は近くを通り掛かった使用人に声を掛けた。
「先客がいるから少し遅れると先生に伝えてくれる?」
「かしこまりました」
「さぁ朱鷺宮さん、こちらです。二階にある応接間へとご案内致します」
「お気遣い、有難うございます」
朱鷺宮さんを連れて、二階へと上がり、応接間に彼女を案内した。
✤ ✤ ✤
「それで…私にお話というのは?」
「単刀直入にお伺いします」
穏やかな表情が、ぐっと引き締まり、真剣な表情に変わる。
「立花さんは『稀モノ』という言葉をご存知ですか?」
「(稀モノ…?)」
聞いたこともなかった。
「(それもその筈だ…)」
私は、この世界の人間じゃない。
"ある出来事"がきっかけで
この時代へと飛ばされた。
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