第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-
「…ああ、そうだな俺が悪い、悪かったーごめーん」
「その謝り方は良くないと思うの」
「だからごめんって謝っただろ、優しく。」
「………?」
優しくの部分を強調して言った不機嫌な隼人に首を傾げた。
「……──子供ばっかり」
「ご、ごめんね…翡翠」
「謝ることじゃないですよ。まぁほら、久世さんが来るまで女性はいな…ああ、いえ、栞さんはそういう位置を超越してる方なんで…」
「そう?私から見れば朱鷺宮さんもツグミちゃんも充分女性らしいし、憧れなんだけどな」
「そうですね、失言でした。僕にとっては栞さんは姉のような母のような感じなんで」
「それも分かる気がする」
「それにしても立花さんは、友達を大切にしているんですね」
「え?」
「とても嬉しそうに話していたので」
「…うん、大切な友達だよ」
「なら大事にしなきゃですね」
「そうだね」
笑んで話す翡翠に眉を下げて笑う。
「ほら、今度こそ行くぞ。いつまでもみんな揃って巡回は出来ないんだから、しっかり場所や道順覚えろよ」
呆れた様子で滉が足早に歩き出す。
「あ、はい!」
「今行きます!」
私は慌ててみんなの後を追った。
✤ ✤ ✤
「今晩は、立花です」
「やぁ、来たね。お疲れ様。」
「お疲れ様です」
「はい、立花さんの」
机の上に置かれたのは、あの紺色の手帳と一枚の書類。
「それに受け取りの署名をしたらもう逃げられないよ」
「逃げませんよ」
「本当に?」
「本当です」
「はは、君なら真面目にやってくれるだろうとは思ってるけど、一応ね。」
「私は久世さんのように稀モノを見分ける能力はありません。ですが、この仕事を選んだからには、頑張らせて頂きます」
「あまり自分を追い込まないようにね」
「ご心配有難うございます」
猿子さんの気遣いに私は小さく頭を下げた。
「彼らとは上手くやれているかい?」
「はい」
「苛められたりしてないかい?」
「ま、まぁ…例外を除けば、ですが…。本当に皆さん良い人ばかりで…こんな私にも優しくして下さって…本当に感謝してるんです」
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