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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第7章 ナイフと紺色の手帳-ヒヨクノトリ-



「え!?い、いえ…その、決してそういうわけでは…」



「別に誤魔化さなくてもいいよ?あんた達はボクを煙たがってるから、悪者に仕立て上げたいんだよね?」



「…笹乞さん」



「どうぞ気が済むまで店の中を探してってよ。稀モノも、和綴じ本もありませんけどね?」



✤ ✤ ✤


「…それでは失礼いたします。ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした」



結局、稀モノは見つからず、私達は店を出た。



「ああ…人を色眼鏡で見ない、ということはとても難しいですね…はぁぁ…」



笹乞さんの店から出た途端、翡翠ががっくりと項垂れた。



「翡翠、そんなに肩を落とさないで。稀モノが見つからなくて良かったじゃない」



「それもそうなんですけど…。あの時の僕は間違いなく『助けよう』ではなくて『捕まえなくちゃ』でした。いきなりあの人が逃げ出したこともあって、焦ってしまった。…反省すべきです、深く」



「本当に…そう思う」



「…あの。さっきの店の方…笹乞さんと仰るんですよね?笹乞というと、例の鵜飼首相のご子息の…」



「そう。…その本を書いた作家さんで、書店も経営されているらしいの」



「そうでありましたか!」



「ただ、いつもあんな態度なんですよ。仕事の相手に対して個人的な感情を持ち込むのは良くないと分かっていますが…少なくとも『仲がいい』とは言えない書店さんです」



「…まぁ、確かに少し…」



「立花さんは、笹乞さんとあまり相性は良くないみたいですからね」



「そうなんですか?」



「私も初対面の時に色々嫌味言われたけど自分の気持ちをちゃんと伝えたし。流石に今日も嫌味の一つでも言われるのかと思った」



「言い返すんですか?立花さんが?」



「意外って顔ですね。こう見えて私、ハッキリと物事を言うタイプなんですよ」



燕野さんは驚いた顔をしている。



「立花さんは強いんですね」



「強くなければ何も守れませんから」



笑みを湛えながらそう告げた。



「咄嗟だったのもあるけれど、でもとにかく今日のは私達が良くなかったわね。これからは気をつけよう」



「ですね」



「あ!尾崎さん達が戻って来ましたよ!」



見ると、二人が駆け寄ってくるところだった。



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